竹槍の3





「あれでは只挨拶をしに伺った様なものだ…。」
「ムウも大変だった様だね、シュラもお疲れ

 労いの言葉とは裏腹にアイオロスの不埒な指はシュラの太股を悪戯に這う。

その手をクッキーの蓋で撃退しているとアイオリアがやっと目を覚ました。
だが、仲睦まし気に乳繰り合う二人の姿(アイオリア目線)を確認すると直ぐにまた布団を被ってしまう。

「アイオリア、シュラが来てくれたんだぞ。
言いたい事があるならさっさと言ってしまえ!」
「……」

 布団の塊となった弟を宥めすかして何とか出そうとする兄。
まるであの女神拘引事件の起きる前に戻ったかの様な兄弟の姿。
弟は随分大きくなってしまったが、それでも変わらない二人に思わず苦笑いを溢すシュラ。

「何を笑って「ほら、シュラにガキの頃と変わらないって笑われたぞお前。」

そう言われ、頭を撫でられ子供扱いされ更に臍を曲げた弟を兄は思い切り抱きしめる。

「俺はお前達を愛している。」
「…兄さん」
「……。」
「だから3Pやるならお前達としかありえな」

シュラの光速クッキー蓋爆弾がアイオロスの鳩尾に炸裂した。






「すまんな、結局泊めて貰って」
「お泊りセットが残ってて良かったよ」

アイオロスはす巻きにされて獅子宮中庭にサンドバッグの様にブラ下げられている。

 しかし久々に穏やかな空気が二人の間に流れたのも兄のお蔭と云うべきだった。
(その兄が原因で何かいつも二人の間に焦燥感が付き纏っていたとしても。)

 またも頭が痛くなる様な事を考えていると、シュラがアイオリアに昔の様に就寝前のキスをしてくれた。

その瞬間悩みの全ては瓦解し、不思議と素直な気持ちまで戻って来るのが分かった。

「シュラ、俺は魔鈴が好きだ。」
「あぁ、」
「でもお前も好きだ。」
「……あぁ、」
「3Pも…頑張れば出来そうだ。」
「それは頑張るな」


「…おやすみ、」






 そして翌朝、アイオリアが目を覚ますとシュラは既に居なかった。
中庭のす巻きはそのままに、本当に聖域から出て行ってしまったのだ。

しかし、アイオリアの胸の内は寝る前にシュラがくれた素直な気持ちのまま高揚していた。

 鮮やかな朝焼けに心押され、アイオリアは駆け出す。
魔鈴に気持ちを伝える為に。

そして12宮を駆け下り、家の前で水を汲んでいた彼女の前に立ち「好きだ!」と叫んで己の気持ちを伝える。

しかしその瞬間、魔鈴はアイオリアの股間に必殺のイーグル・トゥ・フラッシュを決めていた。

「失せな。変態。」

――アイオリアは全裸のままであった――。

更に身体中にキスマークを付けて。

シュラのささやかな意趣返しであった事は云うまでも無かった…。




竹槍直訴の説明・<了>






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