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我妻善逸と不思議な黒電話

ボツネタのため急に終わります
推敲もしていないので文章がおかしいところがあるかもしれない
善逸中編「いとしき君を想ふ」の世界線です





それは丁度俺が地方への任務を終え、名前ちゃんへ何かお土産でも買おうかと、近くの商店街をうろついていたときのことだった。

「なあ、そこの、金髪の兄ちゃん」
「へ? 俺?」

俺に声を掛けたのは、少し痩せ型の中年と思われる男性だった。露店を経営しているようで、男の目の前の古びた台に、何やら怪しい雰囲気を醸し出している商品が並べられている。

「兄ちゃん、もしかして何か、命を賭けるような仕事をしてるかい?」
「は?」
「そういう仕事の人はな、“分岐点”が多いんだ。特別だ、タダでこの黒電話をやる、きっと面白いことが起こるよ」

俺の返事を待たずして、男はほら、と黒電話を俺に押し付けた。いかにも怪しいそれを押し付けられて、拒否しない人間がどこにいるのだろう。俺はそれを力一杯に押し返した。

「いりませんってこんなの! なんか爆弾とか入ってんじゃないの?」
「見ず知らずの他人を爆殺したって何の得もありゃせんよ。もし何も起きなかったら返しに来てもいい。逆に謝礼金もくれてやろう」
「え!」

ま、まあそれなら、貰っていいかも。
まんまと男の口車に乗せられた俺は、少し乗り気で黒電話を腕に抱えて持ち帰った。

「兄ちゃんや、電話をかけるの番号は自分の家の番号にするんだよ」

何かの聞き間違いかと思ったけど、その男は確かにそう言った。


***


家に帰った後、名前ちゃんがご飯ができるまでもう少しかかる、と言っていたので、俺は早速2階の寝室で、黒電話を使ってみることにした。驚くことに繋ぐための線がひとつも見当たらなかったので、俺はやっぱりあの男に騙されたんだと思った。きっと今露店に戻っても男はいないだろう。やけくそになって一度電話をかけてやろうと、慣れない手つきで家の番号を入力して電話をかけてみた。恐る恐る受話器を耳に当てる。

「(何も聞こえない……)」

やっぱりそうだよな。そう俺が受話器から耳を離そうとしたそのとき、なんと誰かが電話の向こうで受話器をとる音が聞こえた。

「……はい、もしもし、我妻ですけど」
「……は?」

その声は確かに自分の声だった。間違いない。何か、録音された音声が入っているのだろうか。いや違う、それならもっとくぐもった音になっているはずだ。

「は? ってなんだよ! 失礼なやつだな!」
「お、お前の名前、善逸?」
「そうだけど何!? 文句ある!? 俺今から用事があるからお前みたいな失礼なやつに構う暇なんてねえんだけど!」
「よ、用事ってなんだよ」
「……墓参りだよ! もういいわ! つか俺の声真似しないで似てるのが腹立つ!」

がちゃん!!
嵐のように俺を受話器の向こうで捲し立てたそいつは、最後にそう大きな音を立てて電話を切った。

「(どういうことなの……?)」

まったく意味がわからない。取り敢えずもう一度かけてみようと、俺は黒電話のダイヤルを回し、再びこの家に電話をかけてみた。

「……はい、我妻です」

先程とは違いすんなりと誰がが電話に出てくれた。……って我妻? それにこの声は、名前ちゃん? 料理を中断して、わざわざ電話を取ってくれたのだろうか。そうだとしたら、すごく申し訳ない。

「あっ、名前ちゃん! ごめんね、これ2階からかけててさ」
「……その声、善逸くん?」
「?、そうだけど」
「ほんと? ほんとに善逸くん? 」

やけに確認してくる彼女に、俺は不思議に思いながらも、うん、そうだよと何度も言った。やっぱりこの電話、何かおかしい。

「ねえ、どうしてそんなこと聞くの?」
「だって、善逸くんは、善逸くんは……もう、」

俺はそのあと続いた言葉に、固唾を飲んだ。冷たい汗が背中を伝うのと同時に、俺たちの間に少しの沈黙が走る。

「……私の知ってる善逸くんは、もう亡くなってるはず、なの。なのにどうして? 私はあなたが善逸くんとしか思えない……ねえ、どこから電話をかけてるの?」
「そ、それは……」

ぐるぐると台詞が浮かんでは消え、浮かんでは消えを繰り返す。この電話に繋がる相手は、もうほぼ予想がついていた。今更誤魔化しても無駄なだけだ。多分、ここは正直に言った方が良い。

「……こんなこと言っても信じてくれないかも知らないけど……多分、俺はきみとは違う世界の俺なんだ」
「え?」
「多分きみの世界は、“俺が死んでる世界”なんだ。そして俺は“俺も俺の世界の名前ちゃんも生きてる世界”」
「あ、あなたはどうやって電話をかけてるの?」
「怪しいおっさんから貰った怪しい黒電話からかけてる」







ここでおわり!!
プロットも作らず勢いで書いたのが仇となり、没になりました。没ネタ用のネタと言っても過言ではありませんが、記念にここにのせます。

ちなみに、善逸が最初に電話をかけた世界は、はかなきの世界の未来を想像しました。夢主が亡くなり無限城編が終わったあと、桑島さんが持っていた土地を相続した善逸が家を建てて、一人で暮らしています。

2019.12.30


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