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小話まとめ




「この鯛、目が冨岡さんにそっくり!」 なまえは箸で行儀悪く鯛の目玉をつついた。どういう意味なのか分からない。彼女は俺がそんな状態にあることを分かってくれたようで、直ぐに気を回せるそんななまえに感心した。そうしてなまえは眩しい笑顔で言い放った。「冨岡さんの目は死んだ魚の目にそっくりってことです!」

心に突き刺さる/冨岡義勇






「ねえ無一郎くん」「何? 僕は忙しいんだ。用事がないなら話しかけないでもらえる?」
そんなふうにきつい言葉を投げかけて、それでも困ったように柔らかい笑みを向けるだけの彼女になぜか飽きてしまっていた。やっと人を思いやる大切さが分かって、やっと君に今度こそ弾けたような笑顔をさせてあげられると思ったのに、肝心の君本人がいないんじゃ意味がないじゃないか。

明日君のお参りにいくよ/時透無一郎






いつもおどおどしている彼が好き。巣から無理矢理落とされた雛鳥のように、ぴーぴー鳴いて人に頼りきりなところが好きだった。でもある日の任務で眠ってしまった彼に助けられてから、何故かどきどきが止まらない。どちらも彼のはずなのに、いつもの彼にときめきを感じなくなってしまった。ああ、早く眠ってくれたらいいのになあ。

恋は心を腐らせる/我妻善逸








伊之助の目が好きだ。いつも猪頭を被って大っぴらにそれを見せびらかしていない。だから、私はそれに希少性というものを見出してしまった。強引に猪頭を奪ってしまえば、とかいう問題ではない。たまたま、偶然、何かの拍子でそれが見えてしまうのが良いのだ。本人にその話をしてみたら、あまり分かってくれなかった。

今で言うスカートの中身/嘴平伊之助








もぞもぞと服の中で這いずり回るひんやりとしたそれに意味は無いと分かっているのに屋敷内を走り回った。師範の蛇は噛むから怖いのに。こんな状況ある? どんな春画なの? 泣きそうになりながら走りまわっていたら師範の怒鳴り声が聞こえた。私はそれに全力で反論する。「師範の蛇が服の中に入ったんですよお、とってください今太もものあたりにいるから!」 その結果、師範が至急呼び出してくれた胡蝶さんが来るまで私は開放されることはなかった。唯一得られたのは師範のほんのりと赤みを帯びた顔を見られたことだけだと思う。

絞め殺されなくて良かった/伊黒小芭内






「不死川さん、もう治った傷に薬を塗っても意味ないんですよ」「んなこというなら嫁入り前の女が顔に傷なんかつけるなよなァ」 既に傷だらけの彼なら傷跡なんて時間とともに消えていくということは知っているはずなのに。毎日欠かさずそれをしてくれているということは、彼の辞書にも一応気遣いという言葉が載っているということだと思ってもいいのかな。

それなら貴方が貰ってよ/不死川実弥






2018.11.2




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