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恋は盲目




また来たのか、というアオイの冷たい視線を無視して、「また来ちゃったんですか? 」 とにこにこと笑って迎えてくれたしのぶさんの方に目を移した。

……この笑顔で怪我治りそう。いや、治るわ。

隠に背負われていたあの状況は好きな女性に見せるには物凄くかっこ悪いけれど、どうせ叶わぬ恋なのだ。それなら一秒でも長く姿を眺められる方がよっぽどマシだ。

今回はなかなか酷い骨折を二ヶ所もしたから、治れば機能回復訓練が始まるだろう。訓練にはしのぶさんは来られないけど、終わったときの 「頑張りましたね」 という優しい声色が本当に心地よくて、その場で眠ってしまいそうなくらいなのだ。

それに俺が訓練が辛くて諦めてしまいそうになっても、「一番応援していますよ」 と慰めてくれる。だからきっと俺の気持ちはしのぶさんにバレているし、大方やる気を出させるために言っているんだろうけど、でも俺はしのぶさん以外の女の子にそんなことを言われても何も変わらないと思うんだ。

「……」
「……なあカナヲ、こんな俺って気持ち悪いかな? あーあ、しのぶさんが俺を好いてくれたらなあ」

ことりと松葉杖を置いて、カナヲの隣に腰掛けた。

「……」
「……返事をしてくれよ、ほら、銅貨投げて! 表が話すで、裏が話さない!」

そう言うとカナヲはしぶしぶ銅貨を投げる。すると、出た面は見事に表。俺が顔色を明るくすると同時に、カナヲの溜息が聞こえた気がした。

「心配する必要はないと思う。」

「ほんとに!? 俺、気持ち悪くない!? やった!」


これで安心してしのぶさんを見つめられる!

とにかく俺は嬉しくて、今頃食事でも作っているであろうアオイにでも自慢しようと松葉杖をついて猛スピードで足を引きずった。






「(……そういう意味じゃ、なかったんだけど)」






少し短めです。結構気に入っているので気が向けば続きも書いてみたいとひそかに思っているお話です。
2018.10.20




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