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傷だらけの顔




夢主が整形しているというはなしです。題材がデリケートですが悪意は一切ございません。苦手な方はお戻りください。



***




「せいけい、してるの」




震えた声が余計に静寂を引き立てる。手から叩き落とされたアルバムから写真が数枚はみ出て、そこには眩しい笑顔の一重の少女が映っていた。


「……だからわ゛だしこんなに美人じゃないんだってえええん」
「ちょっと落ち着けってお前、」
「うわあああん見捨てないでよう私みすたと別れるなんてやだよおお」


彼女はその愛らしい垂れ目から涙が留めなく溢れさせて、俺の胸に顔を埋めた。じわじわと服が濡れて青色が濃く変色していく。恋人の方は過呼吸になりそうなくらい号泣しているのに、意外にも俺の思考は冷静で、整形してるんならこんな男の硬い胸に顔を押し付けて良いものなのだろうか、とさえ思えてしまった。正直に言ってしまうと彼女は初対面のときからこの顔だし、まったく整形だと疑ったこともなかった。そもそも余程の依存性でもない限り、自分にとってそんなことなどどうでもよかったのだ。さて、どうしたものか。



「……あ〜、ちょっといい? なんか誤解してるみてえだけど、俺はお前と別れる気なんて毛頭ねえし、むしろお前がキレイになりたいって勇気出して顔にメス入れるほど根性がある女だって分かってむしろ惚れ直したんだせ?」


ぴく、と彼女は泣き声を止める。顔を隠したまましばらく硬直したかと思うと、ふううう、と震えた深呼吸をして、じっと俺の方を見つめた。うん、やっぱり顔は初対面のときと全く変わってない。

「目もきった」
「おう」
「小鼻縮小して鼻筋にもぷろてーぜいれた」
「おう」
「おでこもプレートいれた」
「いいんじゃあねーの」
「依存性だよ」
「俺の覚えてる限り会った当初のお前の顔と今のお前の顔は変わってない」


まだ不安なのか、なまえの呼吸音は荒かった。お前、そんなんじゃ逆に俺に嫌われて欲しいみたいだぜ。そう笑って言うと、なまえは再びじわじわと双眸を滲ませた。

「い、いや、悪い意味じゃあなくて、」
「ありがとうぅ……」
「は?」
「こどものときのアルバム、見られたとき、もう、だめだと、おもったの……ううっ、あり、ありがとうぅ……」


ぐすん、ひっく。啜り泣く声が彼女の喉の奥から紡がれる。……あ、目ェ擦るんじゃあねえよ、せっかくキレイになれたんだろ。

目を擦ろうとした彼女の手を止める。うん、やっぱり美人だなあお前は。


頭を撫でてやったら、彼女は心底安心したようにふにゃりと笑った。





2019.5.4



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