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明日に送る手紙


こんにちは、静です。父様はお元気でしょうか。私と善逸さんは無事山を降り、幸せに暮らしています。
鴉の方からお話を聞きました。村が平穏を取り戻せたことを知り、何百年ぶりの平和なのかと思うと、私はとても嬉しく思います。実はご報告したいことが二つほどございましてお手紙を書かせて頂きました。
ひとつは言い伝えのことです。鬼殺隊のしのぶさんという方がたくさん資料を集めてくださり、雷様の言い伝えについて詳しいことが分かってきました。言い伝えの内容も知らなかった私にとって、それは驚くべきものでした。
まず、“雷様” がどうして私、そして私の前世にあたる女性たちに執着していたのかということ。それは私達は“稀血”という珍しき血質を持つ人間だからだそうです。稀血にも程度があるそうなのですが、私達はその中でも濃度が段違いに高いそうです。
しのぶさんの知り合いにもそんな人がいるらしいのですが、私達はその人と同等かそれ以上かもしれない、という事でした。言い伝えの中に
“ その娘、顔形、髪、肌、血までもいと清きなりけり”
と言う文章があったかと思います。顔形……の部分は単に見た目かと思われますが、血についてはこの“稀血”のことを言っているだろうとのことでした。
そして私の瞳の模様のことも教えて頂きました。鬼殺隊の人だけが見れる機密資料に載っていたそうです。
元々、私の……幾つ前の前世かは分かりませんが、一番最初、瞳に刻まれていた模様は今のように細い糸のようなものではなく、しっかりとした稲妻の形をしていたそうです。
それがだんだん生まれ変わるうちに崩れてゆき、今の模様に変化していた、とのことです。もしかしたら、今までの私達が鬼に喰われたくない一心で印を消そうと抵抗した証なのかもしれません。その模様ももう消えてしまいましたが、善逸さんが綺麗だと褒めてくださったこともあったので、少し複雑な気分でした。
もうひとつは私自身のことです。先程に比べれば取るに足らぬことではありますが、父様のことですからきっと心配されていると思うので、伝えておくことにします。
まず、私は現在とある藤の家に住まわせて頂いています。善逸さんと結婚どうこうの前に、私は家事ですらまともにしたことがありませんので、花嫁修業のようなものだと思っています。善逸さんはあちこちを転々としていますが、必ず週に一度は顔を見せてくれます。お金が溜まったら家を建てて住もうと、恥ずかしくはありますが、私のために頑張ってくれています。
ただ、いつ命を落とすか分からない危険な職業なので、不安がないと言ったら嘘になります。でも私は今とても幸せです。安心してください。
だからお父様も私の心配なんかしないで、村の方々と暖かい場所を作っていってくださいね。


***





「──静ちゃん、ただいま!」
「善逸さん、おかえりなさい」
「あれ、手紙?」
「うん、村に手紙を送ろうと思って」
「よかったら鴉に預けておこうか?」
「え! いいんですか?」
「あー! また敬語戻った!」
「ええっ? うそ!」
「ホントだってばー!」




──最後に、今まで私を守ってくれて……いえ、育ててくれてありがとう。







2020.2.22