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勘違いも程々にして



元拍手お礼文
本編 2話と3話の間くらいのお話です。



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突然だが、私はいつも寝るときは藤の家か、冨岡さんのお屋敷の一部屋を借りて就寝している。当然ながら冨岡さんとは別で。しかし、一度だけ、一度だけ一緒に一夜を過ごしたことがある。結論から言えばやましいことなどではないから、今思えば変な勘違いをした気持ちになって大変恥ずかしかった。






あの日は初めて冨岡さんと一緒に過ごした日だった。藤の家を利用しての宿泊だったのだが、

「え、ええと……私と冨岡さん、同じ部屋なんですか?」
「主人に頼んだ」
「寝るときも……ですか?」
「ああ」


どういうこと? 冨岡さんは何がしたい? 何をするつもりなの?

疑問符が次々と頭の中へ浮かんできては消えずに残り続ける。あまりにも冨岡さんが平然としているから、こちらだけが焦っているように見えてならない。いや、実際そうだろう。でも変なことをする人には見えないしなあ……。






悶々としながら過ごして居れば、あっという間に夜は来る。



「……まだ寝ないのか」
「え? い、いや、えと、両親に、手紙を書こうと思いまして、」


とっさに思いついた言い訳にしては文句の言われにくい出来ではある。が、どうせ先延ばしにしただけなのだから結局無意味だ。けれど最近全く両親と連絡をとっていなかったから、丁度良いと思うことにして便箋に筆を走らせた。その様子を冨岡さんはじいっと眺めているものの、口を挟むことはない。少し怖くて体をこわばらせながらも、恐る恐る鴉に手紙を渡した。少し時間稼ぎでもしてくれれば良いのに、鴉は颯爽と空へ羽ばたいて行った。

「……」
「……用事は終わったか? 」
「あ、あの!」

なんだ、と冨岡さんは目を細める。

これだけは絶対に譲れない。もし仮に何か事情かあるにしても説明してもらわないと不安で仕方がないのだ。

「わ、私と、冨岡さんが、い、一緒の部屋で寝る……というのは、どんな目的があるのですか?」
「呼吸の常中が出来ているのかが見たい。階級が多少上になってくると慣れてるからか寝てる間にいつの間にか忘れていることがよくある」


即答だった。私がどもりながら、視線をあちらこちらに逸らしながら、勇気を出して実行した質問に、冨岡さんはいとも簡単に答えを出した。

「……」
「どうかしたか?」

なにか怒りに近いような感情がじわじわ滲み出てきたのを感じた。上司にこんなことを丸々言ってしまうのはかなり覚悟がいるけれど、それでも私は言いたい。


「先に! それを! 言ってください! 私はもういろんな意味で怖かったんです!!」

はあはあと大きな声を出したせいで息が苦しい。

「!?、……ああ、すまない、」

冨岡さんは一瞬面食らったような顔をして、少し顔をうつ向けて小さな声で謝罪をした。私は充分反省しているように見える彼を責める気はなくなってしまって、でも苛立ちは収まらない。

結局私は不貞腐れて寝てしまったのたが、冨岡さんはそれでも常中が出来ているのかを確認することを諦めなかったらしく、朝まで見張られていたというのに私は気づけなかったのだった。もちろん私はそのことを一生忘れたりはしないだろう。







元拍手お礼文のものです。わりと序盤から夢主と冨岡さんが打ち解けているのはこれがきっかけだったらなあという話でした。
2018.11.14



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