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早朝の攻防


※ツイッターのぷらいべったーというやつで上げたSSです。短いです。








瞼の隙間から眩いくらいの朝日が飛び込んできて、俺は自然と目が覚めた。それと同時に、強い圧迫感に思わず身を捩った。
その柔らかなものは決して布団なんかじゃない。そんなのあって堪るものか。正真正銘俺のお嫁さんである。

「……おーい、なまえちゃん、おきてー」

耳元で囁いてみるが、彼女の体はぴくりともしない。結婚して一緒に住むようになってから初めて分かったこと。なまえちゃんは意外に寝相が悪い。……いや悪くは無いな、可愛い。だって俺が身動き取れないくらいに抱きしめてくれるなんてそれ以外の何者でもないでしょ。俺の胸に頭を埋めてすうすうと気持ちよさそうに寝息を立てている彼女を無理やり引き剥がそうと言う気には到底なれず、俺はその少し丸みのある可愛らしい顔を観察するに留まった。
ほっぺがちょっと赤い。触ってみるとふにふにと柔らかくて少し熱い。そりゃそうだよね、朝までずっと俺に抱きついて寝てたんじゃそうなるか。かわいい。睫毛長い。多い。かわいい。かわいい。
そうしているうちに俺は体を起こす気が全く無くなってしまっていた。少しばかり感じていた空腹感はすっかり失せていて、むしろ何故かお腹いっぱいの気分だった。立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花。では寝ている姿はなんと形容すればいいのだろう。桜かな。椿かな。それとも蓮の花? どれも彼女に似て可愛らしくて素敵だな。我ながら気持ち悪いけれど、それくらいに愛おしい。ずっとこの子を守ってあげたい。

「(……ま、いいか)」


こんな日があっても。そう俺は起きるのを完全に諦めて、彼女をぎゅうと抱きしめて、再び瞼を下ろしたのだった。


彼女から苦しそうな声と音が聞こえたのは、それからすぐのことだった。




2019.11.5(初公開 2019.10.12)