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「#幼馴染」のBL小説を読む
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もはや何を言っているのかすら分からない叫び声に、俺はどうすれば良いか分からなくなった。

「お、俺は大丈夫だから……」
「い゛や゛だよおお血がいっぱい出てるよおおナランチャしなないでええええ」
「これくらいなんともないからさ」

そう言っても彼女は俺に抱きついたまま離れない。もう涙が服に染み込んで地肌が濡れている感覚もある。早くこの血が止まって欲しい、と肩に付けられた新鮮な切り傷を抑えてもそれはあまり意味を為さず、無駄に手のひらを赤に染めてしまうだけだった。

「ごめんなさいごめんなさい! わたしが上手くこの子を動かせないから」
「だっ、誰だって最初はそんなもんだって! 沢山練習すればきっとコントロール出来るようになるからさ!」

もはや彼女のスタンドが困っているような表情をしている気さえする。彼女はスタンドのことを 「この子」 なんてぬいぐるみを呼ぶみたいに言うのだ。クソっ、本体に似て可愛い顔してるくせにこんな能力持ちやがって。正直彼女なら回復系のスタンドの方が似合っていると俺は思う。

相手が相手だからフーゴやブチャラティを押し切って俺がナマエの教育係を申し出たはいいけど、思ったより大変だ。……いや、でも俺がこいつを助けてやるって決めたんだし、途中で投げ出すなんて男じゃあない。でもさすがに今の状況ではアドバイスを貰うのが妥当だろう。

「ちょっと休憩にするかあ。オレンジジュース好きだったろ?」
「うん……でもナランチャ、血が出てる」
「だーかーら! 俺はこんなのへっちゃらなんだって。だからこの血は……えと、出てるだけ! 偽物みたいなモンだよ」
「……ほんとうに?」
「ホントホント!」

大袈裟なくらいの笑顔を造って言い聞かせると、彼女はやっと安心してくれたみたいだった。でもちょっとやばいかもしれない。頭がくらくらしてきた。

「え、えっとじゃあ、俺ジュース取ってくるから、ちょっと待っててくれ」
「うん」


まず取り敢えず止血しないと。確か包帯は……

「ナランチャ、その傷どうしたんですか?」
「……げっ、フーゴ!」

文句ありますか、とフーゴはその長い前髪を揺らした。なんとか誤魔化さないとと思ったけど、頭の良いこいつには簡単に怪我の原因を悟られてしまったみたいだ。

「またあの子ですか? いい加減諦めたらいいのに。僕はブチャラティが適任だと思いますけど」
「ブチャラティはきっと、俺にもできると思ったから任せてくれたんだ! 」
「いいや、彼女が貴方に一番懐いているからってだけです」

何故か納得してしまう自分がいて言葉が詰まる。そんな俺の様子を見てフーゴは大きなため息をついた。

「でもまあ、彼女を教育するにはそれが大事なんでしょうけどね。……ですが流石に怪我が多すぎです」

貴方が最初の犠牲になってもいいんですかと言われて、俺はあいつが最初に殺したのは母親だ、と答えた。黙り込んでしまったフーゴを見て、俺は失言してしまったと思った。でもフーゴはおもむろに包帯を取り出して俺の傷口に巻き付けた。

「じゃあ、もうこれ以上彼女に人殺しをさせないようにしないとダメですね」
「あったりまえだろ」

俺達が言うことではないけれど。早くまたあいつに勉強を教えてやりたいなあ、と呟くと、フーゴは呆れ返った顔をした。俺はそれに軽い文句を言ってから、オレンジジュースを取りに冷蔵庫へ走った。




「遅くなってごめん、包帯を巻いてたんだ」
「……、」
「え、ええと、血が出てたらまたお前が泣くだろ? 俺そんな顔みたくないからさ」

付け加えるように言うと、彼女はまた安心したように笑った。



2018.12.27