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※原作後設定、恥パ要素かなり多め、夢主死ネタ

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さも当たり前のことを言ってしまうかもしれないが、このギャング組織パッショーネのほとんどはスタンド使いである。ボスであるジョルノ……もといジョジョはもちろん、下っ端にだってスタンドを持つ者がたくさんいた。ただ、その枠に入っていない今となっては珍しい人間も少人数ではあるが存在はしていた。
そのうちの一人が今この組織の事務の仕事を担っているナマエ・ミョウジだった。


はじめこそ本当は能力を持っているんじゃあないかと疑われてはいたが、その誤解が解けた今ではほかの人間よりも彼女は比較的簡単にジョジョからの信頼を勝ち取った。なんでもジョジョはそれを調べるためにわざと危険な任務に行かせたのだとか。難易度としては“スタンド能力があれば比較的簡単に達成できるが、そうでなければかなり無茶をしないと成功できない”くらいのもので。そんな状況でも彼女は拳銃一丁だけで何とか任務を遂行したそうだ。

彼女は頭が良くて、その後は普段の僕と同じような事務の仕事を任された。ただ僕は任務に出張することも多かったから、見た書類の数は圧倒的に彼女の方が多い。今こそこんなOLのようなことばかりしているが、僕と同じように身の潔白を証明するために相当な修羅場を潜って来たのだろう。そんな流れに加え、僕は彼女の落ち着いた雰囲気に惹かれて自然と仲良くなった。特にミスタと疲れるくらいの騒がしい会話を繰り広げた後で過ごす彼女との時間はひどいくらいに心地良かったように思う。もし彼女に能力が発現したのならば、共に任務へ行く日が来たりするのだろうか。

「ねえフーゴ」
「えっ、な、なんですか」

そんな夢に限りなく近い妄想を頭の中で繰り広げてしまっていたからか、いつもなら自然に対応出来るナマエからの呼びかけに反応するのが遅れてしまった。焦るように見た彼女の顔色はあまり良いものとは言えなかった。

「私は貴方達のスタンドが見えるけど……私自身に能力がないことは知ってるわよね?」
「はい、まあ」

そう言うと、彼女は大きく息を吸って、思い切ったようにその口を開いた。

「実は昨日、不思議な夢を見て。……多分アレは人間じゃあなくて、私のスタンド……だったと思う。その彼女はね、私に向かって“貴方が死ねば私は現れる”って言ってたのよ」

そう言い切ったナマエは不安そうに瞼を震わせた。僕は言葉も出なくて、ただ頭の中で自分が組織に忠誠を誓い直したあの日、ジョジョに説明された僕を始末しなかった理由を思い出した。確か彼が話してくれたのは、“殺害が不可能で、動くものに対して永遠に攻撃をし続ける”という殺戮兵器のようなものだった。


「そういうタイプのスタンドなんて私は見たことないの。フーゴなら何か知ってるんじゃないかと思って……ただの夢だから、ジョジョに言うのも躊躇っちゃって」

僕にはこのことを言うべきかの判断が出来なかった。言ってしまったらこの関係が続かなくなってしまう気がしたのだ。

「……さあ、聞いたことありませんね……」



ただ、この日から僕は彼女と多くの時間を過ごすことになったのは明確だった。彼女が死んでしまってジョジョが話してくれたときのような殺戮兵器になってしまうことような気がして怖かった。実際はスタンド能力は一人一人違うから、そんなこと有り得ないというのに。
彼女にそんなふうになってほしくない。その一心で彼女が帰宅するときも送ったりだとか、自分ができる範囲で僕は彼女に対して過保護になっていった。危険な任務は能力がない彼女には任されなかったから、それだけが救いのように感じていた。

「あの……フーゴ? 最近思うのだけど、そんなに私に対して過保護にならなくていいのよ? 護られる以前に私を狙う人なんてどこにも……」
「これはジョジョからの命令ではなく、僕の意思なんです。だからそんなこと言わないでください」


彼女は時折そんなことを言った。でも僕がこう言うと、彼女は困ったように眉を落として、でも満更でもなさそうに笑うのだ。その笑顔すらも自分には眩しいもののように感じた。



2019.1.2