稲GOss | ナノ




clap6



(シュウ+天)



「天馬、君は選ばなければならないよ」


無機物な温度が頭を撫でる。優しく、緩やかに、それでも降り掛かる言葉は残酷に現実を突き付ける。嫌だ。擦れた声で拒否を示すが、シュウは何も言ってくれない。優しいシュウ。残酷なシュウ。彼は決して嘘は付かない。真実しか紡がないその唇は、時に必要な優しい嘘すらも遠ざける。


「嫌だ、シュウ、俺は嫌だ。だって、こんな事あっちゃ駄目だよ」


「でもこれが現状さ。どんなに嫌がろうが、君は決めなくちゃいけない」


無機物は撫で続ける。何度も何度も何度も何度も。困ったねぇ。ため息混じりに零れた声に肩が震える。


「答えは決まっているのに、君はまるで駄々っ子のようだ」


「、シュウ」


「そうだろ?君は彼が大事。分かり切った事だよ。だって、ずっと君と一緒にいたもの」


滲んだ瞳を隠しもせずに顔を上げれば、シュウはやっぱり穏やかな顔をしていた。いつもの深い闇を細めて、褐色の唇で弧を描いて。


「天馬、君は優しい子。悲しい程にね。だけど、それ故に稚拙だ。君は知らなきゃいけない。理不尽な世界を。不条理な常識を。切り捨てる覚悟を」


語る声は深みを帯びて此方に重くのしかかる。霞んだ視界でシュウは真実を突き付ける。声を出さずに首だけを左右に振る。嫌だ。助けて。知りたくない。


「天馬。選択の時だ」


言って。君の口から。君が言う事に価値があるのだから。
無機物が離れていく。シュウ、君は、残酷な迄に真実そのものだ。


「さぁ、早く、僕を」


殺して。




(四捨五入)
(全部は持っていけないよ)





「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -