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clap5



(京天)


白い手が伸びる。同じ歳にしては自分の物とは全く違う、筋張った大人の手に近い形。頬に触れた指先はヒンヤリと冷たくて、ピクリと小さく反応すれば、その白は直ぐ様離れた。


「大丈夫」


ちょっとびっくりしただけだよ。安心させるようにゆっくり伝えると、少し彷徨ってから再び触れた。人差し指が頬を滑る。それは中指、薬指と増えていき、最後には頬に掌が添えられた。そこでやっと相手の強張った顔が安堵の色を滲ますのだから不思議なものだ。サッカーに対する姿勢は激しい程攻撃的であるのに、人に触れる時になるとまるで壊れ物を扱うように繊細になる。人に慣れてない猫ってこんな感じかな。ぼんやりと相手を見つめていた目を伏せて、冷たい手に擦り寄る。すると白い手がまた逃げようとするから、片手を動かしてその白を頬と手で挟み撃ちにした。小さく悲鳴を上げた相手を見る。黄色い瞳から困惑しているのが読めた。


「弱虫。ちゃんと触ってよ」


押さえる手に力をこめる。ちゃんと触って、感じて、覚えておいて。お前のとは違う、俺の体温を。


「絶対に、忘れないで」


人に怯えるお前の事だから、どんなに俺が想いを表現したとしても、きっとこれからも逃げてしまうのだろう。

だから、俺は外堀から埋める事にしたのです。
目で、声で、匂いで、肌で、味で。
お前の五感に俺を残してやろうと思うのです。




(後は時間を掛けて)
(コトコトと)





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テーマ「人外ファンタジー」
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