稲GOss | ナノ




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「マサ天」
※匿名様のみお持ち帰り可能です。




「お前もどっかいっちまえ。同情なんて真っ平だよ」


そんなの、なんの役にも立たないじゃないか。目や鼻先を真っ赤にして、こちらを拒絶する狩屋は、酷く幼い印象を与えた。狩屋は次々と口を動かして、こちらを近寄らせないようにわざと批判的な言葉を連ねていく。


「いい加減うんざりしてたんだよ。仲の良い友達ごっこなんて、クダらねぇ。馬鹿じゃねぇの?」


揺れていく瞳。震えだす声。慌てて言葉を強めて、震えをなくそうと声を大きくさせる。言葉の、態度の隙間から見える狩屋の気持ちが、とても痛々しい。
一歩。近づくと狩屋はビクッと大きく狼狽えた。言葉が、また投げつけられる。


「き、気持ち悪ぃんだよっ、いつも一緒にいて、ニコニコ緩んだ顔向けて、他人の事信じきったような態度出して、…本当はそんな事思ってないくせに!」


信じるな。信じるもんか。信じたら、最後。負けなんだ。
信じたら、またあの日みたいに置いていかれる。


「結局みんな自分勝手なんだよっ、どうせ裏切るなら最初から近づいてくんなよ!!」


もう、我慢できなかった。駆けだして、目の前の存在を力いっぱい抱きしめた。すぐさま暴れだす。蹴られたり殴られたりしたけれど、それでも必死に離れまいと更に力を込めた。
彼の言葉は、鋭くこちらを切り裂いていくのに、どこか切なくする。きっと、嘘をつくのは人を上手に信じられないから。ずっと他人を拒絶して、素直になる方法を忘れてしまったんだ。どうしても、ありのままの素直な感情を吐きだせないと、苦しんでいる。

狩屋の嘘は、彼を守る鎧だった。


「…信じなくてもいいよ。くだらなくても一緒にいようよ」


「…っ、」


「嘘だって平気。どうしようもなくなったら話も聞くよ。喧嘩もして、疲れたら一緒に帰ろう」


服を引っ張る力が緩んでいく。ハァハァと荒い息をしながら、胸の中で狩屋の顔は歪んでいった。


「一人は寂しいよ。傍にいさせて狩屋」


「―――っ、ぅあっ」


ガクリと狩屋の膝が崩れた。咄嗟に頭を抱きしめて倒れないように支えると、その瞬間に見えた狩屋の顔はポロポロと大粒の涙を零して子供のようで。つられたように熱くなる目の奥を感じながら、再び狩屋の頭を抱きしめた。きっと狩屋は見られたくないだろうから、せめて見ないでいてやろう。それが今彼にできる精一杯の配慮だと、思ったよりも小さな頭に顔をうずめた。ふわり。優しい匂いがする。


お前の事まだ何も知らなけれど、少しでも長く傍にいたい。そう思うんだ。
軽く、本当に軽くだけど、背中にしがみ付くその手が愛おしくて堪らなかった。




(優しさって残酷ね)
(心まで乱れるもの)

「To Mother」YUI





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