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clap4



(京天)


初めてのキスは特別だ。男女関係なく、それは同じ考えだろう。青臭い。ガキの戯言。そう口々では言おうと、その事実は老若男女と時代が変われど普遍的な理だった。


「じゃあ、俺の初キスはサスケだなぁ」


あいつったら顔中舐めてくるから。可笑しそうに話す奴に、そうかよ。と素っ気ない返事を返すが、内心では動揺していた。サスケって誰だ。顔中舐めてくるってなんだ。こんなガキの様な顔をしながらも、こいつは相当濃厚な毎日を過ごしているのか。思考がどんどんとあらぬ方向に進みながら、出来るだけ平然とした態度で「サスケって?」と尋ねると、松風はいつものような人懐こい笑みを浮かべた。


「家族だよ。沖縄から雷門に着て、ずっと一緒にいるんだ」


近親相姦。
すぐさま浮かんだ単語にガクリと顔を支えていた腕がズレ落ちる。ゴンっと中々立派な音が響くが痛みよりも、衝撃的な事実の発覚にただ呆然とする。剣城!?と遠くで松風の驚く声が聞えるが、その声に反応する余裕などなかった。最大の敵は身内か。なんて事だ。ギリッと唇をかみ締めていると、頭に暖かな感触が振ってきた。顔を上げると、目の前で松風が心配そうな顔をして頭を撫でている。


「……なんだよ」


「なんだよじゃないよ。いきなり机に頭ぶつけたり、無視したり、俺の方が意味わかんないよ」


痛くないの?と撫でる手が優しい。そういえば、ぶつけたところから少しずつ痛みが襲ってきた。けれど、暖かな松風の手が心地よくって、ただされるがままになっていると、あ。と松風が顔を覗き込んできた。


「剣城、唇から血出てる」


「あ?」


そういえば、先ほど唇を噛んだ時、プツリと食い込む感触がしていたなぁ。舌で血を舐めとると、松風がピクリと反応して、撫でていた手を頬に下げてきた。なんだよ。そう言う前に松風の顔が近づいて、唇に生暖かい感触が滑った。


「………は?」


「うん。まずい」


口をモゴモゴさせながら離れていく松風の顔を馬鹿みたいに呆然と見ていると、俺の視線に気づいた松風が少し頬を染めてはにかんだ。その笑顔が、何故か今も印象的に俺の中で残っている。


「普通キスってレモンの味だって言うんだけどなっ」


後日、サスケの正体を知った俺は、松風の人間で初のキスを奪った事を理解して、また思い悩む事になる。




(セカンドキッスは)
(赤い味)





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