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clap3



(拓天)


キャプテンはよく泣く。声を上げずに、綺麗に涙を流して、静かに泣く。感情が豊かだとよく俺に言うけど、それはおあいこ様だと思う。だって、そうでなければ貴方は何を思ってそんなに涙を流すの?


「キャプテン」


泣き続けるキャプテンの顔を覗き込む。ポロポロ、透明な雫が光を帯びて、幾つも幾つも落ちていく。宝石みたいだなぁ。手を伸ばして、雫を受けとめた。一滴、二滴と溜まっていく手の平を見ていて、何故か酷く充足感に満たされた。


「天馬、やめろ」


そう言って、涙が溜まった手の平を傾けようと、大きな手が伸びてきた。だから、慌ててその手から逃げて、何も考えずに俺はその手に溜まった雫を飲み干した。


「ばっ、」


「……しょっぱいですね」


キャプテン。と言い終える前に、中々の衝撃が頭を襲った。後にジンジンと痛んできた頭を押さえて、何するんですかと訴えたら、もう一発殴られた。(しかも同じ所を!)


「いたいっ、痛いですキャプテン!酷いですキャプテン!」


「馬鹿かお前はっ!なんでそんなもの飲むんだっ!?」


汚いだろっ!そう怒鳴ったキャプテンにカチンと頭に来る。汚い?貴方の涙が?あのキラキラと流れる涙が汚い?
こんなにも人を思って流した涙だというのに?


「キャプテンの涙は汚くないです!こんなに綺麗なもの他に無いですよ!!」


力一杯怒鳴り返したら、キャプテンは一瞬ポカンとした顔をして、直ぐ様トマトみたいに真っ赤になった。なに馬鹿な事言ってる。本当に馬鹿だお前は。と馬鹿馬鹿と何度も繰り返すキャプテンはもう泣いていなかった。あの宝石のような涙が見れなくなったのは少し惜しかったけれど、やっぱり俺は泣いてないキャプテンの方が好きだ。


目尻が腫れたキャプテンを見ながら思う。きっと、あの涙はキャプテンの感情だ。何事にも敏感なこの人の膨大な感情が溢れて、瞳を通じて綺麗な雫となって零れたんだ。


結局、キャプテンは何で泣いていたのだろう。誰かを思って、あの透明な涙を流したのだろうか。
チリッと胸の奥が燻った。それはちょっと嫌かもしれない。口内の塩の味を飲み込んで、体内に流し込む。少しでも、俺の中に浸透すれば良いなぁ。

未だ続くキャプテンの説教を聞きながら、今度は俺の為に泣いてほしいなぁ。だなんて考える。そしたら、また俺はキャプテンの感情を掬いあげて、飲み込むんだ。それはきっと、甘美な味だろうから。




(甘いかな)
(やっぱり塩っぱいのかな)





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