稲GOss | ナノ




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(京天)
※コリエ様のみお持ち帰り可能です。
※少し注意。







人間の欲望とは底知れなくて、どこまでもどこまでも深く濃厚に溢れてゆくものであるのだろう。窓の開けると、秋の匂いを微かに含んだ風が部屋に流れては通り過ぎていく。
サラリと、剥き出しの肌を撫でる風の冷たさに肩が震えた。風邪を引いちゃうかも。やっぱり閉めちゃおうかな。でも熱くて仕方ない。火照る身体を自分で抱きしめで、チラリと自分の隣に眠る剣城を見た。彼と交わってから二時間ほど経つが、未だに身体は熱くなるばかり。どうしたのだろうか。ムズムズと身体の中が疼いて眠れない。こんな事初めてで、どうしたら良いのか解らない。とりあえず火照る身体を覚ますために窓を開けてみたものの、思っていたよりも冷えた風に、お互いの身体のためとほんの少しだけ開けておく事にした。


「……つるぎぃ」


出来るだけ小さな声で名前を呼んでみたけど、相手の眠りは深いもののようで、ピクリともしない。どうしよう。篭る熱はジクジクと身体を蝕んでいく。それでも、眠る剣城を起こす気は起きなかった。
いつも眉間に皺を寄せて、難しそうな表情を浮かべる彼が、唯一自分に見せてくれる安らかな顔。いつもは人を寄せ付けぬような、鋭い空気を纏っているけれど、こうやって近くで顔を見ていると彼がとても綺麗な顔をしている事が良くわかる。綺麗に通っている鼻筋や、自分のように丸みがない、スラッと流れる顔のライン。気配に敏感な彼が起きないようにゆっくりと慎重に手を近づけ、肩にかかった長い髪を梳く。見た目より柔らかい猫っ毛な髪質は密かなお気に入りで、一緒に夜を過ごした後はこうやって必ず剣城の髪に触れた。剣城もその時間は好きにさせてくれて、そんなひと時が心地よかったりもする。けれど、その本人は深い眠りについていて、なんだか物足りなかった。もうちょっと触っても良いかな。髪に触れてた手を移動させて頬に触れてみる。自分よりも体温が低い剣城の頬はヒンヤリとしていて、気持ちが良かった。頬、目じり、鼻筋と撫でて、唇のところで手が止まった。ああ、触れなければ良かった。剣城の冷たい肌を触れる度に、自分の中の燻る熱が高まっていく。それでも、まだ触れていたくって、誘われるままに顔を寄せた。


(ちょっとだけ、だから)


キスをしたら直ぐに眠ってしまおう。きっと眠れるまで時間がかかるだろうけど、じっと我慢していればこの熱だって収まってくれるだろうから。そう決心して、間近に映る剣城の鼻先のあたりで目を閉じた。


「…寝込みを襲うとは良い度胸だな」


唇に当たる冷たいものと、低い声が耳を震わせた。はっと目を開けると、鮮やかな黄色がしっかりと開いてこちらを捕らえている。起きてた。しかもこのタイミングで。慌てて離れようとするけど、口元に触れる手と反対の手で後頭部を抑えられ、元の位置に戻される。


「ぅ、剣城、いつからっ」


「お前が窓を開けた頃から」


さみぃから目が覚めた。愉快そうに目を細めるその顔は猫を連想させた。俺は犬の方が好きだなぁ。だなんて現実逃避のような全く関係ない事を考えるが、唇触れる白い指が口内に入ってきて思考が現実に引き戻された。


「ふがっ、ふ、ふるぎ」


「随分と積極的じゃねぇの。いつもは嫌だ嫌だって喚いて泣きじゃくるくせによ」


え?天馬さんよぉ。ケタケタと喉で笑いながら、俺の口の中を暴れまわる冷たい指が情事を連想させて、身体の熱がジワジワと上がっていく。意地悪。陰険。性悪。次々と出てくる目の前の相手の悪口を思い浮かべるけど、口からはアウアウと言葉にならない変な声しか出てこない。そのうち指の本数が2・3本と増えていくものだから俺の口の端からボタボタと涎が垂れてそれはそれはだらしがない状況になってることだろう。恥ずかしさも伴って視界が歪んでいく。酷い。熱い。辛い。三つの感情が混雑してせっつく様に口に含んだ剣城の指を軽く噛んだ。少し驚いたように軽く目を見開いて、指が口内から逃れようとするけど、退いてゆく手を掴んで引き止める。そのまま指を甘噛みしたり舐めたりして、訴えるように剣城を見上げた。
剣城は少しの間こちらを見つめ、小さくため息を吐いて目を閉じた。そして再び目を開くと、ソコにあったは先ほどより色濃くなった黄色。少し前までは猫のようだと思ったけれど、今の色はそんな可愛いものではなく、もっと獰猛な獣のような勁烈さを滲ませるようで、無意識に背筋が震える。白い指が抜かれて、変わりに剣城の顔が近づく。


「…なぁ、どうしたい?」


耳元に直接落とされた欲の混じった声に、堪らなくなって縋り付いた。もう、我慢の限界だ。


「…、欲、しいよぉ…っ」


あとは流れるように事に及んだ。ずっと求めて止まなかった熱に浮かされながら、剣城と何度も名前を呼ぶと、剣城は今までにないくらいに嬉しそうに笑っていた。
何でそんなに嬉しそうだったのかとか、何でいつもよりも優しく抱いてくれたのかとか。色々な疑問を感じたけれど、後日それを問いただしても当の本人は相手にしてくれず、やり場のないモヤモヤ感が俺の中で燻っていた。




(求めては)
(求められたいと欲する)





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