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(拓天)
米子様のみお持ち帰り可能です。






自分がおかしくなっているのは解っていた。それがどんどんとエスカレートしていっているのも。ハァハァと呼吸が出来ない。眩暈がする。ぐらぐらと揺らいでいる視界の真ん中で天馬が倒れていた。


(俺は、一体何をした?)


階段の下に転がる恋人を、自分は見下ろす形で立っていた。天馬。そう叫ぼうとしても、吐き気が喉を伝ってくる。慌てて口を押さえて、視線を彷徨わせた。誰か。周りを見渡しても誰もいない。俺と、天馬だけ。


(俺が)


声も出ない。足も動かない。俺の全てが言う事を聞いてくれないようだった。
何をしてるのだ。目の前で、一番愛おしい存在が倒れているというのに。唯一言う事を聞く揺らぐ眼球を天馬に戻す。天馬は初めの倒れた格好のまま、ピクリとも動かない。顔は向こう側を向いているからどんな表情をしているのか解らなかった。もしかしたら、眠っているのかもしれない。もしかしたら、苦痛に歪んだ顔をしているのかもしれない。


(お前を)


初めはちょっとした違和感だった。もう1人の後輩と抱き合っているところ。先輩に頭を撫でられているところ。天馬が誰かと触れ合っているのを見かける度、自分のどこかがパキリパキリと音を立てて崩れていった。それは日を追うごとに増えていく。何が崩れている?その原因も、そしてそれが催す影響も理解できず、ただ目を瞑って天馬に笑顔を向けた。

その結果が、これだ。


「…っ、ぁ…ぁ…っ」


口を押さえる手が震えてる。涙が、眩暈が止まらない。こんなつもりじゃなかった。お前を、傷つけたいわけじゃなかったんだ。グラグラと視界が揺れる。頭を抑えて、ギョロギョロと眼球だけを忙しく動かした。誰か、誰か、天馬を、俺を、


無意識に後ずさる足が、数歩先で止まる。ふと、誰かが横にいた。助けて。その誰かに乞おうと視線を向けた先には、口元で三日月を描く自分がいた。




(SOS)
(もう遅い!)





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