(名前変更)
涼しい快適な場所を求めて適当にブラブラ歩いていたらいつの間にか時計の針は午後1時を差していた。グダグダ歩くのに夢中になっていたからか正午を知らせる鐘も聞こえなかったわけだ。私はまだ、銀時と歩いていた
「ねぇ、銀時」
「あん?」
「お腹空かない?」
「確かに空いたかも」
だがしかし私達、学生は先程も言った通りオシャレなファミレスで昼食を食べるようなお金がない。従って友人宅に転がり込むのがなんやかんやで結末となる。
「だからって、なんで僕ん家なんですか」
あ、今この眼鏡、言葉を発した。と思ったのだ。冗談なのだ。今現在私と銀時の二人で、新八の家の居間に居る。と言うか居座っている。そしてどうして此処にいるんだと聞かれた私は答える
「お腹空いた、なんか食べさせてちょ」
「『ちょ』とかつけても可愛くないですからね」
「うるっさいな〜新八のくせに!良いからなんか食べさせなさいよ!ステーキ希望!」
「俺は特大パフェ」
「二人して勝手に希望してんじゃねーよ!お昼ご飯ならもう僕と姉上は食べ終えましたし、他のところをあたってください」
「つれないね〜新ちゃんは。親友をそうやって見捨てるんだ?そして親友が餓死していくのを見殺しにするんだ?」
「まず新ちゃんって呼ぶの辞めてくれません?そして僕ら親友って言えるまで仲良くないですし、お昼食べないだけで死にません」
「仲良くないからって優しくしてくれないんだ新ちゃんは!」
「だから新ちゃんってやめろォオオ!イライラすんだよ!」
なかなか言うことを聴いてくれない新八にぶつくさ言っていると奥の台所から新八の姉、妙ちゃんがニコニコしながら出てきた。「いらっしゃい名前ちゃんと銀さん」と言うと隣で声をあらげている弟を見てどうしたのと問う。
「アネゴ〜お腹空いたアル〜」
「あら名前ちゃんったら神楽ちゃんのモノマネが上手なのね」
「でしょ?なんか食べ物ない?」
「ごめんなさいね〜生憎今はこんな物しかなくて…」
こんな物しかなくて…と言いながら妙ちゃんが台所から持ってきたもの。銀時は妙ちゃんが登場してきた時から感づいていたからかずっと帰ろう帰ろうって小声で言ってたけど私は聞こえないふりをしてた。でも今わかった。銀時が何故そんなに脂汗を流していたのか、何故顔がみるみる青白くなってきてるのか。
「ほんと何もなくてこんな物しか」
本当に何もないんだと分かった。だって妙ちゃんが台所から持ってきたのは黒い炭のような物体だったから。こんな物体しか持ってこれないほど何もなかったのだと私は悟った、悟ることにした。でも直後の妙ちゃんの言葉に私は驚いて幻滅してしまう
「今はこの卵焼きしかないんだけどこれでも良かったら召し上がって?」
「え?妙ちゃん今なんて?」
「召し上がって?」
「いやその前」
「これでも良かったら?」
「その前」
「この卵焼きしかないんだけど」
「そこ!」
「どうかしたの?」
「それ卵焼きなの!?」
「ええそうよ。今回はちょっとアレンジを加えてみたの」
加えすぎだろう!と、アレンジと言うよりも火を加えすぎだろうと突っ込みたかった。いくらなんでもこんな真っ黒焦げになるほど加熱したらダメな事を小学校の家庭科で習わなかったのだろうか。いや習わなくてもわかる。というかもう卵焼きが可哀想。
「ぐあ!?」
その時銀時にいきなり襟首を引っ張られ、物凄い速さで新八宅を出た。「どうしたの!?」と慌てて出てきた妙ちゃんがだんだんと遠く見えなくなった。ずっと襟首を掴まれてたのでそろそろ首が苦しい。息がもたなくなってきたと思ったらどこかの椅子に下ろされた。脳に酸素が行き届かず最初は此処はどこだと考えていたら暫くして回復した頃に此処は午前中アイスを食べた駄菓子屋、地デジが分からないおっちゃん家だと気付いた
「おっちゃん、また来てやったぜ感謝しろって事で俺イチゴパフェ」
「また来やがったのか問題児野郎。イチゴパフェなんてそんな洒落たものウチにはねーよ」
「えー、ねーのかよ。いい加減新メニューとして作ってくれよイチゴパフェ!」
「そんなん食ってるからバカになるんだ。たまには頭脳パンでもかじってな」
「はぁ!?なんだハゲ親父!」
「黙れ白髪頭!」
「ちげー!これは銀髪っていうおしゃれヘアーだ!」
ガミガミとまた銀時とおっちゃんの口喧嘩が始まった。この二人の喧嘩は声が大きすぎて聞きたくなくても耳に入ってくる。頭がガンガンしてまた具合が悪くなってきた。その時、おっちゃんがお好み焼きを持ってきてくれた
「なに?珍しくおっちゃんの奢り?」
「バーロー、おめーらいつも無銭飲食だろ」
「学生だから仕方ないの。出世払いにしといてよ」
「ちゃんと出世すんだろうなー?」
私と銀時がすっからかんに空いたお腹をお好み焼きで埋めている隣で、テーブルに頬杖をつき片眉をあげながらフンッとバカにしたような笑いを見せた。私は一度箸を置き、おっちゃんに親指をたててグーとしてみせた
「大物になってみせるよ」
「本当かぁ?」
「マジのマジのマジだし。必ずだし。絶対だし。」
隣で食べていた銀時が私に「なかなかのビッグマウスだな」と笑った。そしておっちゃんは私の発言に少し驚きの表情を見せたあと、ハッと短く笑って鏡を軽く投げ言った
「冗談は顔だけにしな、青のりいっぱいついてんぞ」
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