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ドンドンドンと遠くの方で太鼓を叩く音がして、ピーヒョロという笛の音も混ざってて、近くではざわざわと人の会話の音がする。

本日夏祭り。私は愛しい土方くんと一緒にこの一大イベントをエンジョイするために今日ここへ来た。浴衣の帯も緩めに結んで何を食べても苦しくならないようにしてある。髪の毛も普段はザ・テキトーだけど今日はちょっとお洒落に見えるように工夫してみた。口だってリップを塗ってきたし、爪にも薄いピンクのマニキュアを塗ってみた。

「もう完璧でしょう今日の私!」

仁王立ちでドヤ顔を決めた私がそう叫ぶと神社の鳥居の下で待っていた土方くんは「遅ェ!」と怒声を発した。

「何分待たせりゃ気がすむんだ!」
「ごごごごめん!いろいろ身支度整えていたら…ついうっかり」
「うっかりじゃねェ!遅刻は厳禁だ!」

額に血管を浮かせて腕を組み説教をする土方くん。浴衣姿が凄くカッコいい。甚平とかもいいけどやっぱ浴衣が似合う男の人って鼻血もんですね、結婚してください。

「おい聞いてんのか?」
「はっ!いや、はい聞いてました。とりあえず、遅れたお詫びにこれどうぞ!」
「あん?」

こんなこともあろうかと、右袖にマヨネーズを忍ばせておいた私が大正解のようだ。鬼のような顔だった土方くんが穏やかに、と言うよりマヨネーズをもらったくらいでそんなに嬉しいのかっていうほど機嫌が良くなっている。鬼に金棒、土方くんにはマヨですね。いや私も自分で言ってる意味がわかんない。

「とりあえず何食いてえんだ?」
「えーっと、りんご飴!」

出店が立ち並ぶ一番賑やかな場所に来た。たこ焼、焼きそば、お好み焼き、焼き鳥、かき氷、水飴、綿菓子、他にも射的屋さんやくじ引き屋まである。今年も本格的なお祭りでテンションがグングン上がる私。最初は乙女らしく土方くんのリードについていこうと思っていたものの、気付けば私が土方くんの手を引いていた。

「土方くん、次はお化け屋敷に入ろっ」

夏祭りと言えばお化け屋敷でしょう!と言うわけで来ました怪しい屋敷の前。先程の賑やかな出店通りから少し離れたところだからか、やけに静かで気味が悪い。土方くんが屋敷を見て身震いをした。

「はぁ?こんなののどこが楽しいんだ。俺ァ入らねェ」
「えーなんで、入ろうよー」
「いやだ、ぜぜぜってーに入らねェ。名前だけ行ってこい、俺見てるから」
「やだよ!一緒に入るから楽しいんじゃん!…まさか土方くん」

怖いの?と言おうとしたその時、向こう側からまた人がぞろぞろとこちらへ来る。暗くてあまり見えないので最初は分からなかったが大体喋り声で想像がついてくるのだ

「今度は4人であの幽霊屋敷に入るぜよ」
「ババババッキャロー!お化け屋敷は入らねェって脇が酸っぱくなるほど言ったろー辰馬!」
「ぎぎぎ銀時ィ。て…てめェ、野郎のくせにビビってんのかァ?だだだだっせーな」
「そう言ってる高杉。お前も十分足が震えているぞ」

あー、モジャと天パとチビとヅラかー…なんて気づいた時には向こうも既に気付いていて、一番鉢合わせにしてはいけない土方くんと銀時を対面させてしまった事に、私は頭を抑えながら溜め息を吐いた

「あ!てめーは!!!」
「ちっ大串君かよ。名前ー、そいつの近くにいると脂質異常症が移るぞォ」
「糖尿病のくせに人の事言えた義理かテメェ!」

銀時も土方くんも前世で何かあったのかと思うほど、顔を合わせるとすぐに喧嘩をするわけで。あ、でも土方くんのことをメタボ予備軍扱いしたのはちょっと許せないかな。でも土方くんも言い返したから喧嘩両成敗?

「っていうかよ天パ野郎、テメェさっきお化け屋敷怖がってただろ?情けねーなァ?」
「はぁ?パードュン?何言ってんだよマヨラー。怖がってるビビリはおめーだろ!」
「何抜かしてんだ頭イカれたか?俺がビビるわきゃねーだろが、寝言は寝て言え」
「じゃあ今からこの屋敷に入って、ギャアとか叫んだら負けな?ビビりな?肩パンな?」
「上等だゴルァアア」

私が坂本やヅラと久々に会ったので世間話をしている間、銀時と土方くんが勝手に口喧嘩を勃発し、勝手に二人でお化け屋敷にダッシュしてしまった。

「あー!私も入りたかったのにい。」

という私の呟きとほぼ同時に、お化け屋敷の中から二人分の悲鳴が響いてきた。私と坂本が顔を合わせて苦笑いする。桂はエリザベスにたこ焼を食べさせていた。高杉は煙草を吸って一服していた。

出店のほうを見ればまだ人混みは途絶えず、寧ろ賑やかさを増しているように見える。携帯を見て7時30分だと確認した私が「もうすぐ花火じゃんね?」と坂本に言うと「高杉が4人の中で一番楽しみにしてたきに」とクスクス坂本が笑っていた。

ああ高杉らしいよなんて思って、高杉のほうをちらりと見れば、中指だけを立てた所謂「死ね」のポーズでメンチを切られた。







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