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「ねねっ、んまい棒の新味が出たんだよ!何味か聞きたい?聞きたい?」


夏休み開始以来、今回は2度目の補習日である。補習対象となった私達、不登校3人組は留年を免れる為に今こうして学校へ来ているわけで。昨日総悟が山崎を連れて私ん家に来訪してきた際に置いていったレジ袋の中に、んまい棒も入っていてそれが新発売のものだった感動を熱く語ろうと私が話を振るのだが、銀時と高杉は私の話なんてどうでもいいと言わんばかりの態度をとっている。銀時は机にだらけてまさに夏バテのような衰弱した様子でいるし、一方高杉は携帯を取りだしいじりはじめた。なんだよなんだよ2人して。あの大人気のお菓子、んまい棒の話なのになぜそんなに食い付いてこないのか不思議だよ私は。

「ね、銀時!んまい棒の新メニューがさ!」
「……」
「なんと味は、チョコキムチ味なんだよ!」
「……」
「甘いもの代表と辛いもの代表…、まさかの真逆コンビのコラボ!?こりゃ革命が起きたよ!」
「……」

いくら話しても銀時は死んだ魚のような目を輝かせはしなかった。恐らくこの前の結乃アナの事件が原因で1日2日時間が経った今でも銀時をこんなにショックのどん底へ落としているのだろう。遠く、遠くを見つめている銀時はそっとしておくことにして、高杉の方を向く。

「やっぱ時代は異色のコラボだよねー」
「知らねェ」
「チョコキムチ味めっちゃ美味しくて私は吃驚したんだよあの時!」
「ってか、高3にもなって駄菓子に夢中かよ。」
「なんだよ、んまい棒馬鹿にすんな!んまい棒に笑うやつは、んまい棒に泣くことになるんだからな!」
「そんな精神年齢がガキだからおめーはいつまでも処女なんだ」
「うわ!うざ!ヤリ●ンの癖に!ぶっ挿しまくりの癖に!」
「経験ねぇやつに言われたかねーな、てかぶっ挿しまくりとか言うな殺すぞ」
「うまくねェ棒、くわえさせてるくせに」
「てめェ犯し殺されてーらしいな」
「汚ならしい!今更触んないでよ!どうせ女なら誰だっていいんでしょ!どーせ!」
「うるせー黙って死んでろ糞豚」
「てか私も女なんですけど!」
「うっせぇな。おめーは、んまい棒でもかじってろ」

やはり疑問だ。高杉は他の男より比較的付き合ってる女に手を出すのは早い方だと私は認識している、でも私の時は手を出してこなかったしもう論外とまで言われたことが付き合っていた当時にある。ただ私だってこんなヤリ●ンに大切な純潔を奪われたいわけじゃないんだが、それは裏を返せば「お前からは女としての魅力を1ミリも感じない」と言われていると言うこと。それに私は非常に腹が立っているんだよ高杉死ねコノヤロー。

「てめーが死ね」
「うっさいチビ」
「あー分かった。そんなに犯し潰されてーんだな」
「違うし!」
「お前そこに寝ろ。今からコイツらの前で散々犯した後、そろばんでなぶり殺してやる」
「近寄らないでよ変態!てかなんでそろばん出てくんの!?」

シャキーンと高杉のズボンポケットから現れたのは年忌が入った木製そろばん。私はそれを見て肩をガクッと落としながらツッコミを入れる。興冷めしたとはこの事だ。

「もういい」と一度溜め息を吐いて席に着席し直した私に高杉は「ハァ!?」と、いつもの冷静沈着さを忘れ「良いわけねーだろ」と怒鳴った。が、私は耳を塞ぐようにかばんに入っていたイヤホンを取り出して両耳につける。「チッ」と厳つい舌打ちをかまして近くの椅子を蹴りあげた高杉も一応席に座った。銀時は相変わらず顔が死んでいる。そんな幼馴染みの事など目もくれず、かばんの中を探す私。イヤホンを取り出したはいいけど肝心の音源となるミュージックプレイヤーが見当たらないではないか。

「てめーは何を探してんだ?ああ?」

窓際からねっとりとゆっくり口調のムカつく声が聞こえてきて「iP●dに決まってんだろ!」と本日一番のヤンキー顔で答えてやると、窓辺に寄りかかり、不気味な笑いをしながら手に何かを持っている高杉。その何かは私が今探しているものだった。高杉は私の表情がガラリと変化したのを確認すると、持っている方の腕をすっと窓の外へ出した。落とそうとしている…コイツ完璧に私のiP●d落とそうとしている。

「高すっ…チビ杉ィイイイ」
「なんでわざわざ言い直したよ死ね」

「死ね」の言葉と一緒に高杉が手の力を緩めた。するりと手を通り抜けて落ちていく私のiP●d。

「ああああああああ!!!」

下を見てからクククッと笑い満足感に満ちた高杉が席へと戻っていく。その胸ぐらを掴み思い切りぶん殴ってやるのはいつでも出来るが、今は窓辺にダッシュして恐らく真下に落下していったiP●dの安否を確認しなければと窓から身を乗り出した。が、立派に枝を伸ばしている木々が邪魔でよく見えず、教室を駆け出した。

「あ、名前はん。どないしたん?そない慌てはって。」
「花子…!」

廊下を走っているときに、登校してきた同じく補習組のやや不良花子と偶然出くわした。相変わらずの長いスカートにスカジャンを羽織って、薄っぺらいカバンを持ち、竹刀を握りながら登校してきた。いつの時代の不良なんだよ全く。

「おはよう。もう補習始まるで、どこ行く気?」
「ちょっと下に!」

そんな花子のファッションに対するツッコミはまた後日改めて。今は我がiP●dの生息確認を!私が走り去ると花子は「廊下走ったら危ないで!校則違反やぞ!」と、それは自分の外見を鏡で見てから言え!と言い返したくなるような言葉を私の背中に叫んだ。






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