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今日は珍しく雨が降った。ここ最近は晴れてばかりで普段太陽がウザいくらい照り付けている地面には雨雲から落ちてきた雫が濡らし、いくつもの水溜まりを作る。いつもなら蝉の鳴き声で煩いが今日はザーザーという雨の音が久々で心地よく、そして


「新鮮に感じた。…って真面目に語ってる場合じゃないし!」


窓際で外の様子を伺っていた私は畳をバシンと叩きながらその場に立ち上がる。夏なのに、折角の夏休みなのに雨天のせいで貴重な1日がパーになってしまったのだ。雨の音に混ざる時計の秒針の音が私を急かしているようにも感じた。

「名前、電話〜」

盛大な溜め息を漏らした時、部屋のドアが開いて電話の子機を持った母さんが居た。「ん」と言って渡された子機を「誰から?」と聞かずに受けとる。大体電話の相手が検討ついているからだ。わざわざ携帯ではなく家電に掛けてくるそのエキセントリックさはどっかの馬鹿な長髪野郎しかいない筈。めんどいなーと言いながら電話に出ると案の定相手は桂小太郎、通称ウィッグ、いやヅラだった

「もしもし」
「ああヅラ、どした」
「ヅラじゃない、かつ」
「…らだ!はい分かりました。お電話有り難うございました、では失礼しまーす」
「待たんか!」
「なにさ」
「雨が降っているな」
「…そうだね」
「蛙が鳴くと雨が降るらしいぞ、豆知識だ」
「へぇー」
「猫が顔を洗うと雨が降るっていう説もあるようだぞ」
「だから?」
「猫と言えば、この間エリザベスと道を歩いていたら一匹の猫と出会ってな」
「…電話切るよ?」
「待て待て、話は最後まで聞くものだ」
「はぁ」
「で、その猫の肉球がふにゃふにゃもにゅもにゅで」

ピッという音を鳴らして電話を切ったのは私。なんかイラッときたから電話を切った。というかヅラから来る電話はいつも内容がそういう他愛もない事ばかりで、暇な時は老人の昔話を聞いているような感じたから暇潰しになるけど、気分が優れない時にこういう電話が来るとイラッとする。っていうか私、お話聴きますセンターとかじゃないのに何故毎回…。

「暇なら少しは勉強しなさい」

子機を戻しに下へ降りると親にそう言われ、イライラが募る。無視をして自室へ戻ろうと階段のほうへ歩を進めたが、母さんが「高校卒業したらどうする気?」と尋ねてきた。そう言われてみれば高校を卒業してからの事を考えていなかったことに気づく。勉強も出席日数もとりあえず留年せず卒業できる程度に頑張っていればいいだろうとその先をいつも後延ばしにしていたのだ。でも気がついてみればもう私も高校3年生だ。全然通学してなかったからだけどもうこの時期と言ったら進路担当の先生に将来について相談していることだろう。

「進学するの、それとも就職?」
「…ニート」
「ふざけんな」
「冗談冗談」

同年代の友人とは違い、親にはあまり冗談が通じない。機嫌を悪くした母さんに「そのうち考える」と伝えて自室へ戻ってきた。戻って来ても実際やることがない。そうなるとやっぱりさっきの話が頭を過る。

「銀時は卒業したらどうするんだろ」

銀時だけじゃない。高杉とか総悟とか土方くんも。でも土方くんは前に聞いた時に警察官を目指していると言っていた。だからそういう学校に進むんだろうけど、ホントかっこいいよね人間性がしっかりしてるわ土方くん。

「それじゃ私は警察官の妻ってことで」

寝ころんだ私が独り言を言って、やはり恥ずかしさが込み上げてきて足をじたばたさせながら両手で顔を覆った。するとその手の上からずっしりとした何かの重みを顔で感じとる。ガサガサしていてレジ袋のような、てか誰だ!そう思い、起き上がると微笑して片手をひらひらさせた沖田総悟が「よォ」と言った。後ろにはザキもいる。

「どうせ暇してんだろうと思って遊びにきてやったぜィ」
「あんたらが暇なだけでしょ」

先程のレジ袋を漁る。某コンビニのマークがプリンとされたそのレジ袋の中には駄菓子やジュースが入っていた。私はその中からカ〇ピスを選び、ぐいっと喉へ流し込む。

「この間、土方さんとデートに行ったらしいですねェ」

不覚にもブホッとカ〇ピスを吹き出す私。口の周りや服や手足に白く透明がかった液体が跳んだ。硬直した私だったがそれを見て総悟は「カ〇ピス溢すなんざ一番やっちゃいけねぇ事ですぜ」と眉間にシワを寄せて言う


「危ない画に見えまさァ、端からみたらアレをぶっかけられてい…」
「黙れ発情期!」
「で、プール楽しかったですかィ?」

ティッシュで液体を拭き取る。カ〇ピスはもう飲まない!と山崎に渡した。総悟は先程とはガラリと一変していつもの無感情な顔で淡々と話を進めようとする。

「うん楽しかったよ、最っ高に」
「へぇーそれは良かった」
「その棒読みやめてくんない?思ってないなら良かったなんて言わなくていいし」
「いやー別に?」

意味深な言葉に私が総悟のほうへ視線を移せば、総悟はどうでもいいというジェスチャーの代表的な爪をいじるという行動を取りながら言った

「俺ァどうでもいいっていうか寧ろ喜ばしい事だと思いやすが、こいつにとっちゃァ逆なんで」
「…は?」

こいつ、と総悟が親指で指差した先には正座したままカ〇ピスを両手で持ち、なんだか落ち着かない様子の山崎。なんだ?トイレ我慢してんのか?みたいな落ち着きの無さ。

「逆?」
「ええ。ま、でも詳しいことは本人から聴いて下せェよ」

「じゃ」と言い残してその場を後にしようとする総悟の足を掴み「全然意味わかんないんだけど!」と訴えかければ「俺用事があるんで」と言い捨て結局帰っていった。

「……」
「……」

残された山崎は私の自室に未だに正座したままである。口を閉じたままの山崎に何か言えよオーラを出すと、「えーっと」と頬をポリポリ掻きながら話し始めるのであった。







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