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私がフリーズしている間に周りには結構動きがあって、銀時は現れた初対面の男子には興味なしと言った感じでモッサモッサとお好み焼きにかじりついていたし、おっちゃんは神威に店番を任せてまた店の奥へと消えていったし、神威は私の隣に座りニコニコしている。

「で、そっちの彼は誰?名前の彼氏?」

名前の彼氏かな、そう言っている時の神威の目は一瞬殺意を込めたように鋭い眼差しだった。だが、「違うよ、ただの幼馴染み」と私が説明した途端にまた穏やかな表情に戻り神威は銀時に手を差し出した。

「あァ?ンだそりゃ?」

口に青のりをつけた銀時が神威の差し出された真っ白い手を見てそう言った。すると神威は私の時と同様にお好み焼きを頂戴と、

「シェイクハンド、…握手だヨ」

私の予感はハズレ。神威はあの時に握手を装いスイカを要求したのとは別で、今回はストレートに握手を求めてきた。「おぉ、そうか」と言って無愛想に握手を交わした銀時はまたお好み焼きを食べる。見ていた私は手を引っ込めた神威に「どうして?」と目で聞くと察した神威は「男同士で間接キスなんてまっぴらご免だしネ」と言った。そっかそっかよく考えれば普通にそうなるよね、と納得する。え、って事は私の時のスイカの件は間接キスが目的で!?いやそう言うわけでもないかな。

「そう言えば神楽もここに下宿してるんだよ、知ってた?」
「あぁ、知ってるヨ」

神楽は俺の妹だからネ、と言いながら苦笑いをした神威の表情から私は何かを感じ取った。例えばあまり仲良くないのかなとか。

「今、神楽は留守?いつもなら顔見せてくれるんだけど」
「どこかに出掛けたみたいなんだ」
「暑いのが苦手なのに、よくこんなカンカン照りの中出掛けるねぇ」
「傘を常備してるから大丈夫じゃない?」
「そっか」

なんだか神楽の話題になるとニコニコしながらも多少顔が曇る神威が気になるがそれを言うのはタブーな予感がして避けることにした。そうこうしているうちに銀時が食べ終えて席を立ったので「帰るの?」と聞くと「もうすぐで見たい再放送の番組が始まるからよォ」とかなんとか言っていた。

「もう帰るのかい?話し始めたばかりなのに」

銀時に続けて席をたった私に神威が言う。残念そうな表情の彼にまた来るよと告げて先を歩く銀時を追いかけた。店を出るとスクーターに跨がった銀時がヘルメットを私に投げ渡した。ちなみにスクーターは前から持っていたものらしい。私がヘルメットを被りながら銀時の後ろに乗ろうとしたら銀時は面倒そうな顔で聞いた

「いいのかァ?おめーの新彼氏、寂しげな顔してたぞ?」
「彼氏じゃないよ」
「飼い主が家を留守にする直前の飼い犬みたいだったぜ」
「うるうるした瞳みたいな?」

ハハハっと空笑いすると私を乗せたスクーターを発車させながら「ま、俺にゃ関係ねーけど」と鼻をほじくっていた。

「見たかった再放送番組ってこれェ!?」

呆れながら言った私は今銀時の部屋にいる。帰宅した瞬間、テレビをつけてかじりつくように銀時が見ているのは結乃アナが初出演のドラマの再放送。

「あらまァ結乃アナもお天気お姉さんだけじゃやってらんないみたいだね、ドラマにまで参戦とは」
「いいだろうが社会は弱肉強食の時代だぜ?仕事は待っててくるもんじゃねェ、奪い掴むもんだ」
「うわぁ銀時らしくないコメントだぁ」

ベッドに寝そべりながら近くに散らばるジャンプをパラパラ捲っていた私に銀時は「勝手に言ってろ」と呟く。それがなんとなく気に入らなかったので「なんだコノヤロー、エロ本探し出して銀時ママに見せつけてやってもいいんだぜ?」と言ってやった

「やれるもんならやってみろ」

そう言いながらも視線はバッチリ画面の中の結乃アナである。どんだけ好きなんだよ、どんだけファンなんだよ。アレだよ?もう十分自分だって結乃アナのオタクじゃないか。今後一切新八のことをアイドルオタクなんて言えないんだかんな銀時!

「ああああああああ!」

ベッドの下を覗き込みエロ本やエロDVD等を探していると銀時の悲鳴にも似た叫びが耳に響いた。

「うるっさいなー、耳が吹っ飛ぶかと思ったよ」

そう言いながらテレビに貼り付いて見ていた銀時のほうをチラリと見ると、そこには仰向けに倒れ干からびている死体が一体。すぐさま駆け寄ると銀時が気を失いそうになりながらテレビを指差して言う

「結…乃アナ、が」

見るとそのドラマで、結乃アナが相手役の俳優とキスをしていた。普通の恋愛ドラマにはありふれるごく普通のラブシーン。あくまで芝居なのにそれを見た銀時は白目を向いて気絶している。

「…御愁傷様です」

とその場で合掌してから私は部屋を出て階段を降りる。玄関に向かうときに銀時ママが「もう帰るの?」と2人分のパフェを持ってきょとんとしていたので「銀時がまた結乃アナにやられたよ」と一言だけ告げて坂田家を後にした。






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