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家で扇風機の冷風を浴びつつアイスをかじった時、開いている窓から外が見え、ブロック塀のところから銀色の髪がぴょこぴょこと見え隠れするのを私の目は捉えた。私の家の前をただ通り過ぎていく銀時を「見逃すもんですか」と言わんばかりに取っつかまえ、そのまま駄菓子屋へ引き摺り今に至る

「ンだよ…」と膝についた砂ぼこりをほろいながら言った銀時に「裏切りおにぎり糖尿ギリギリ」と私は一言言ってやった。すると銀時も昨日の補習後の出来事を思い出し「あーアレね」と苦虫を噛んだような顔をした


「私を除け者にして二人でバイクデートとはいい度胸じゃんか」

「デートじゃねーから。俺だって大変だったんだぜ?あの後高杉がバイクに俺乗せたままゲーセン行ったのはいいけどよォ」

「いいなぁゲーセン。やっぱデートじゃん、ゲーセンデートじゃん。私も連れていくだろ普通!ゲーセンといったら私だろ!」

「聞けよ、アイツ格闘ゲームでコンピュータに負けてそのゲーム機の画面を殴り壊しやがってよォ」

「あー…」


私も話を聞きながら色々思い当たる節があった。付き合っていた頃に一度、家のテレビゲームで対戦したら私に負けた高杉が私のOWeeを2階の窓から投げ、ぶっ壊した挙げ句、機嫌を悪くして帰りやがった事があった。あの時は彼氏だしな…と目を瞑ったが、折角親に買ってもらった大切な遊び道具だったのに…って思うと今になって高杉がムカついてきた。


「バカみたいに負けず嫌いだもんね高杉って」

「負けず嫌いも甚だしいぜ、アイツのせいで俺ァポリ公に御用になるとこだったわけよ」

「なんか色々大変だったんだね…」

「おう…」


銀時の肩をポンポンと叩いて慰めていた時、「おめーら来てたのか」とおっちゃんが店先に顔を出した。あーなんだか久々だーと思って抱きつこうとしたが全力で拒否られた。


「おっちゃん、花魁おばさんの親戚の家に荷物とりに行ってたの?」

「ああそうだぜ、アイツから聞いたのか?」

「うん、花魁おばさんから聞いた。親戚の子が都会から夏休みの間だけこっちに来るからって。」

「そうかそうか」

「ねぇねぇ、その親戚の子って誰?もう来てるの?どんな子?可愛い?」


私の幾つもの質問に何回か頷いて「今2階に居るはずだから呼んできてやらァ」と再びおっちゃんが店の奥に消えていった。それを待っている間、銀時はジャンプを読んでいて非常に忙しいようだが「裏切りおにぎり糖尿ギリギリ」のヤローには私と会話をすると言う刑罰を与える!って言うかただ私が暇なだけだけどね!


「ねぇねぇ銀時」

「んあ?」

「今、何時?」

「自分で携帯見て確認すれば?」

「携帯ドブに落とした」

「もっとマシな嘘をつけバッキャロー」

「ちょ、ジャンプから目を離しなさいよ!放置するな!」

「はァ?ちゃんと一言一言に返事してやってんだろーが」

「って言うかここに来てから何分経つんだろ」

「もうすぐ30分経つな」



そう言われて「可笑しいな」と思った。違う、銀時が可笑しいのではない。銀時の頭は確かに可笑しな天パだけど今回はそれではなくて、


「オイてめっ、人の頭をネタにすんじゃねーよ」

「うそ、声に出てた?」


そうではなく。普段なら30分くらい駄菓子屋にいるとここの2階で下宿をしている神楽があの酸っぱい異臭を放ちながら奥から出てくるのだ。が、今日はあのピンクの髪が見えない。珍しくも留守か。あ、もしかしたらあのでっかいワンコの散歩かもね。


「おーう、呼んできたぞお前らァ」


独りで推理しては納得していた私と、ジャンプを丁度読み終えた銀時の前におっちゃんが再び現れた。威勢がいい声でそう言われ、中からどんな子が出てくるのか内心ワクワクしていた。花魁おばさんの親戚の子ってことは神楽と兄弟って可能性が高い。え、めっちゃ白くて可愛い子が出てきたらどうしよう!銀時が止めてくれなきゃ私はその子を食べちゃうかも知れな…


「ほらお客さんだぞ出てこい、神威」


…食べちゃうかも知れないよ?って…あらら?よく知った名前が耳に入ってきたんですが。


「なに?おじさん。…あ!名前じゃん、来てたんだ?」

「親…戚の、子…」


興味がなさそうにボケーっとした顔で神威を見ている銀時。その隣で白目になる勢いで顔が硬直している私。


「アハハ、驚かせちゃったみたいだね」


と、流石マイペースな都会っ子は暢気な言葉を言うのがお得意なようで。先に言ってよね!と言いたくても私の顔は固まって思うように動かない。と言うより私の勝手な期待が遥かに高かったからかその分見知った男子だったという落差が大きすぎて私は今何故かショックを受けている


「なんか腹減ったなーオイ。おっちゃん、お好み焼き。」


沈黙した店内で銀時がおっちゃんに渡した3枚の百円玉が擦れて鳴ったチャリンという音が響く。










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