私も中学生のころは所謂「中二病」の部類で、人とちょっと変わった人間でありたいと強く思うあまり、高校3年を迎えもう半年後には学生を終える身になった今でもその後遺症は消えず、よく銀時には「お前は普通だったら可愛いのに」と言われることがある。それをさっき思い出してなんだか問題を解くのに集中出来なかったなーと思いながら学校からの帰路を歩いています。沖田のヤローは私を待たずに自分だけ帰りやがりました。まあ仕方ない私は優しいから許してやろうか。銀時はあのあと高杉のバイクに乗せられてどこかへ遊びに言った。「私も連れいきやがれー」と叫んだら高杉に「誰が連れてくかよ、お荷物」と鼻で笑われた。ムキーッ!高杉あんにゃろう見下しやがって!実はそんなに身長高くないくせに!しかもあの場で何も言わなかった銀時も銀時だ。くっそう銀時まで私を裏切りやがって。一緒に駄菓子屋に行く仲ではないか!
あーあ暇だ、と小石を蹴った時、前方に突然現れた昨日の少年。あのスイカを種ごと食べたマイペースな少年。あー名前なんだったっけ。私、人の名前覚えるの苦手なんだよね。
「何してたの?」
遠くにいた少年がぴょんぴょんと跳ねるように駆け寄ってきた。あ、今日も傘射してるし。「何してたの?」ともう一度聞く神威。あ、思い出した名前は神威だ!
「……補習」
正直言いたくなくて小さく聞こえるか聞こえないかの声で言うと、笑われるかと思ったが逆だった
「へぇ意外と真面目なんだネ!俺の通ってる高校でもあるけど俺行ってないヨ」
「行かなきゃ留年って脅されてるから。ったく学校側も留年留年ってその単語出せばいいと思ってさぁ、うざいよねそう言うの」
「そんなこと昨日会ったばかりの俺に言ってて良いの?もし俺が学校側の人間と交流があったら名前やばいネ」
ニコニコしてそう話した神威に私はハッとして同時に冷や汗が出てきた。もしバラされたりなんかしたら学校の悪口を言った罪で強制退学…なんて考えたらゾッとする。自分の顔から血の気が引いていくのが分かるほどおぞましい。顔色を変え黙ったままの私にケラケラと笑いながら「冗談だよ」と言った神威は「あ、そうだ」と続けてポケットから何かを取りだした
「そこの道で写真を拾ったんだけど…これもしかしたら名前の友達の写真じゃないの?」
「え、どれどれ」
差し出された写真には学校でチョコをたくさんの女子に渡されている土方くんの姿を誰かが隠れて撮影したようなアングルで写っていた。恐らくバレンタインデーの時の写真か。私は不登校だったので土方くんには家に直接チョコ渡しに行ったからこういう光景は目にしたことがなかったが。
「彼、凄く困った顔してるネー。こんなに女の子に囲まれて羨ましいこと滝の如しだよ」
「羨ましいこと山の如しって言いたいんだね?」
「ふーん意外に頭も悪くはないみたいだネェ?」
それでさぁ、と続けた神威の言葉を遮り私は来た道をダッシュで引き返す。「足もなかなか速いんだ、でもコケないようにネ」と後方から小さく聞こえた気がした。今は神威に色々分析されている場合ではないのだ。一秒でも早く土方くんの所へ行かなければ。
「はい、…ってお前かよ」
ドアを開けて出てきた土方くんは目の前に汗をダラダラ流して立っている私を見て明らかにめんどくさそうな顔をした。閉めようとするドアを足で阻止した私に「今どきセールスマンでもしないぞそんなこと」と土方くんは言う。そんなのはお構い無しにバッと土方くんの眼前まで写真を近付けた。
「土方くん、これ!」
「あん?…あ、こいつァ!」」
「バレンタインデーの時のなんでしょ!?」
「チッ、総悟あんにゃろう覚えとけ」
写真を見せないって条件であのとき宿題やってあげたってのに恩を仇で返しやがって…とブツブツ言っている土方くんの胸ぐらを掴んで「私と言う存在がありながら浮気!?」と問い質す。
「なっ、なにしやがんだ!」
「浮気なの!?これは浮気と見なしていいんだね!?」
「付き合ってもいない俺らの間に浮気なんて言葉は存在しねェ!」
「そうだよその意気だよ土方くん!もっとツンデレっぷりを私に炸裂させてくれ!」
両手を広げ受け応える姿勢を作り「さぁ来い」と言った私に土方くんが「お前、もう怖い!」とシャウトしてドアを閉めた
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