(名前変更)




「少し日焼けしちゃったかなー」


机上に置いた鏡を覗きながらそう呟いた私は現在学校の教室にいる。久々に登校したわけはとりあえず暇だと言うことと、神楽が今朝勢いよく家に入ってきて私を連れ去ったのが原因。あの神楽が乗ってた謎のデカい犬、前から思ってたんだけどアレ何、なんなの?そう考えていたら知らぬ間に沖田が登校してきたようだ。後ろの席に腰掛けたあと私に目掛けて「珍しいねィ今夜は大嵐だ」なんて言うから「煩い」とさっきまで噛んでいたガムを包装紙に包みゴミを沖田の鞄に入れる。黙ってそれを見ていた沖田は私がどや顔をしたのをさらっと確認すると沖田も今まで噛んでいたガムを口からプイッと飛ばした、私目掛けて、包装紙に包まずに。


「うわ、汚な!」

「ざまァ」


結局いつ勝負を挑んでも勝てる気がしない、そんな嫌な人間である沖田総悟という生物は。そうこうしていると今度は銀時が教室に入ってきた。しかも銀時一人だけではなく桂と坂本と、「おや、もう一人」…高杉も一緒だ。あら珍しい。私の真横をヅラは鬱陶しい長髪を靡かせて颯爽と通っていく、アハハと何故か爆笑しながら愉快に通り過ぎていく毛玉坂本、そしてのろのろと通っていく銀時、に道連れとして引っ張られて嫌々歩いていく高杉。通り過ぎていく高杉の後ろから学ランの裾を引っ張ると、前にも後ろにも引っ張られた高杉が「んだよ離せや」と不機嫌そうに振り向いた


「珍しいじゃん高杉が学校来るなんて」

「おめーもな」

「今夜は大雨洪水かな」

「おめーに言われたくねェ」


素っ気ないがそんなの理由は簡単だ。朝早く起こされれば御機嫌が斜めなのは当然のこと。だって私もそうだし。ずるずると引っ張られて席へと連れられていく高杉を見て特に何も思わなかったので席に座り直す。妙ちゃんが笑顔で登校してきた。神楽が妙ちゃんに飛び付いた。九ちゃんも飛び付いた。九ちゃんに東城歩が飛び付いた。九ちゃんにゲシゲシ蹴られる若一筋の歩っち。「あらら歩っち、やっちゃったね」と気の毒に見つめている私と携帯ゲームをしている沖田。私が最後に登校したのはいつだったっけ、まぁ久々に学校へ登校したわけだが以前と全く変わらない風体だ。強いて言うなら不登校の部類に入る私と高杉と銀時が今日3人揃って登校した事によって少しは担任の表情が晴々する予想がつく。それにしても神楽に連れられて来たから時間見なかったけど早く朝の会及び担任が来るまであと15分ある。今のうちにザキに宿題返しに行こう。というかザキは隣の席だった。


「全然存在感がないね、ザキが隣の席だって忘れてた」

「名前ちゃん久々に学校来たんだね。もうすぐ顔を忘れるとこだっ…ぶぐえ」

「学校は来てなかったけど、この前会ったよね?これを借りに私言ったよねザキん家に」

「あ、あぁそうだった」

「ありがとう、助かったよ万年童貞」

「その語尾やめてくんないホントに怒るよ」

「いやザキは怒らせても恐ろしくない気がする」

「うっさいなー」

「目からレーザービームとか出ないんでしょ、どうせ」

「そんなん誰だって出ないわ!」

「まぁ所詮童貞だからな」

「まだ続くんだその件…。っていうか人の事童貞童貞って言ってるけど名前ちゃんだって子供じゃん」

「あ!童顔っていいたいのか貴様!童顔だからって経験ないと思ってんのか貴様ァァァ!」


私はザキに掴み掛かったが、ザキは平然とした表情で「うん」と頷いた。なんだザキごときに…そう思い一度冷静に戻る。沖田はまだ携帯ゲームに夢中だ、あ、イヤホンまで付けだした。


「ザキは私が子供だとでも言いたいの?」

「なんかそんな気がする」

「ふっ、残念だったね」



なんだか経験があるとかないとか、しかも異性同士でこんな朝っぱらから破廉恥な話題を繰り広げて大丈夫なのだろうかと不安になったが、朝のこの教室はギャーギャーピーピー煩いから私達の会話など虫の鳴き声くらいにしか及ばないから心配ない。はい、続行。


「残念だったねってどういう事?」


机に頬杖を付き、なんだかもう呆れ半分で言っているザキ。私は「待っているがいい」とだけ残して、直ぐ様窓際の席に行き、耳にイヤホンを付けて突っ伏している高杉を無理矢理引っ張ってきた。「てんめぇ…」と隣で殺気を出している高杉をザキに見せ、私は胸を張り言った


「ザキよ!私が過去に、『歩く生殖器』で有名なこのエロ男と交際していた事を知らないのかい!?」

「知ってたよ、それが?」

「ふん、勘が鈍いなバカめ!つまり付き合っていたのにコイツが女に手を出さないわけがないじゃん、しかもこの美貌とお笑いセンスを兼ね備えた私にね!」


そう言うとザキは半信半疑の表情で私と高杉の顔を何度も見た。一応言っておくが、これは子供だと思われるのを嫌った私のプライドをかけた言わば闘い。だからこの際その辺の羞恥など、当然の代償だと予め心得ている。大丈夫プライドのためだから。

どうだ!ともう一度鼻で笑い飛ばすと、隣にいた高杉も鼻で笑った


「誰がおめーなんかを抱いただァ?」

「へ?」

「おめー妄想癖も大概にしろ。頭の病院行け、頭の」


そう言いながら欠伸をして戻っていく高杉。呆気にとられて何も言えなかった。だってあのエロ杉と名を馳せた高杉が…私に手を出さなかったなんて…そんな、そんなことあるのかァァァ


「ドンマイ、お互い焦らず生きてこ」


硬直している私の耳に響いたのはそう励ましの言葉を言う山崎退の地味な声と、頭に痛いほど振動する始業のチャイムだった







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