泪とコリウス
身体中の力が一気に地面に吸い取られてしまったように私は膝から崩れ落ちた
ガシャンと音をたてて持っていた愛刀が落ちる。呆然と跪いた私は、敵であり自分の父であるその男を見た
「来るなっ!」と錆び付いた刀をこちらに向けて威嚇するその男は何度も言うが私の父、そして私たち真選組の天敵…攘夷浪士。
私達が遅れて現場に駆けつけた頃には総悟や土方さんが何十人も相手を斬っていて、最奥の襖を開けた時に一人だけ隠れ生き残っていたその男がカタカタと体を震わせながら身構え、今に至る。
全く人が変わってしまい、もうそれは一子の父の顔とは言い難い表情のその男を信じられないと呟きながらその場を動けずにいた私に総悟が駆け寄った
「夢子!どうした!?」
「どうして…!」
返り血を浴び、ぐしゃぐしゃの実の父に訴えかけると目をカッと開いた後に私に叫んだ
「夢子!これは仕方なかったんだ!お前は俺の娘だろ!だから逃がしてくれるよな?」
「……っ」
…情けない。
かぶりを降りながら私をイカれた目で見る男から顔を背けた。堪えたが涙が出てくる。こんなふざけた男が実の父なのだから真選組の私にとってこれ程情けないことはない。
その男の言葉を聞き、初めて知った周りの隊士達は「夢子!」と確かめるように答えを待った
「娘を裏切りながら命乞いをしようだなんて恥さらしが!お前なんて…お前なんて!」
泣きじゃくりながら剣を握る。その手が怒りで震えた
こんな奴、自分の手で粛清したいのに刀を握りたくてもまともに握られない。膝が言うことを聞かず立てもしなかった
「くっ…!」
震える拳を地面に叩き付け怒りをぶつけると掌に痛みが走った
雨でも降っているかのように私の顔は涙でぐちゃぐちゃになり、総悟が背中を擦ってくれた
土方さんや隊士も事情を察すると凄く気の毒そうな顔をする。
そんな顔を私に向けないで欲しかった。私だって親は愛してる。だが今のその男は最早私の慕っていた父では無かった。
私も皆と同じ隊服を身に纏ったその時から幕府への忠誠心を誓った筈だ。身内だろうが、攘夷に関わる輩は粛清する…それが掟。
「夢子…。」と心配そうな表情を浮かべ傍を離れずにいる総悟に言う
「あの男を…斬って。」
「……。」
黙って一度頷いた後に総悟が一歩前に立ち、腰に刺してある剣に手を添えた
私は唇を噛み締め、その一瞬の出来事から目を背けなかった
私にはその男の最期を見届ける義務がある。身内だからじゃない。自分を裏切った人間の死を見る事によって、より忠誠心を強めるため。その死に様は…実に不様だった。
数日後。
余程私を気の毒に思ったのか、人が良すぎる局長の提案で特別に父の葬式が屯所内だけで行われた。勿論幕府に知れれば何かと面倒な事になりかねないから内密に小規模で。
「そんな難しい顔すんじゃねーや。…って無理もねェか。」
全てを終えた後に屯所の縁側に座り、柱にもたれ掛かっていると総悟が声を掛けてきた
「そんな総悟も可哀想な者を見るような表情してるよ」
「そうかィ?」
「柄に合わないからやめなよ、ドSキャラの沖田総悟でしょ」
薄く笑うと総悟も隣に座り、私の頭を撫でた
「親父さんだったんだねィ」
「…昔はあんな人じゃなかったんだ。ちょっと頑固だけど真面目で自慢の父だったんだ」
涙を拭っていると総悟が私を抱き締めた。
総悟の胸に踞って静かに泣く私を彼はずっと抱き締め、言う
「これからは俺が一生アンタを護りまさァ」
仏壇のお線香の煙が微かに揺れた気がした
泪とコリウス
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20100719 17:12
さき様ァアア!
大変遅れてすみません!
一応シリアスです。
てか暗い話になってしまた…
こんな駄文ですが、さき様への
捧げ夢とさせて頂きます
さき様またキリ番を踏んだ時にでも
リクエストして下さいね(^^)
Thanks to reading!
ayasaki-rena
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