ハニースマイリー





「沖田せんせー」


「なんでィ」




昼休み中の視聴覚室。丁度4時限目が終わり、俺が教材を片付けていた時だった


この学校へ転任してから毎日俺に会いに来るヤツが居て、でも勉強に関しての質問をしてくるわけではなく、ただ他愛ない話を吹っ掛けていく。それだけ。




「今日は先生に何話そっかな」



ウキウキした表情で俺の反対側の席に腰かけて一人分にしては量が多い弁当を並べる



「先生も良かったらどうぞ」


「お、気ィ利くねェ」




そう言いながら色とりどりのおかず達を覗き込み、綺麗な赤色をしたタコの形のウインナーに箸を伸ばす。



「ん。うまい」


「良かった」




付き合ってない。教師と生徒だし。ただ話し仲間なだけ、ただそれだけの筈なんだけど…



俺が言った「うまい」の一言に喜びを見せた夢子のその微笑みが決め手だったのだろうか。胸の奥が少しだけ苦しくなった







「今日はやっぱり質問コーナーにしようかな」


「質問コーナー?」




食べ終えて空になった弁当箱を仕舞いながら夢子が言った




「沖田先生はなんで教師になろうって思ったの?」


「そりゃあ生徒達を下僕にするためでィ」


「うわ、ドS…。」




鼻で笑いながら言った俺に真面目に答えてと困った顔をする。窓から入った風が夢子の黒く極め細かな髪を靡かせていった




「…なんでだろうねェ、自分でもよく分かんねーや」



頭の後ろに手を組み、椅子の背もたれに寄り掛かった俺は窓の外を見る


「なにそれー」と言った夢子はまた次の質問をしてきた




「教師になって良かったって思ってますか?」


「それは思ってらァ」


「どうして?」





理由を聞かれたら答えずらい。まさか『お前に出逢えたから』だなんてクサイ台詞、そもそも俺等は教師と生徒。そんな理由なんか世には通じやしない。


ぐっと息を呑んだ俺は突然無言になってしまい、目を泳がすことしか出来なかった




「沖田先生?」


「いや、なんでもねェ」



絶対おかしいこんなの。同じ人間なのに、少し歳が離れてるだけなのに。勉強を教える側と教えられる側に『恋愛』と言う言葉は存在してはならないなんて。


さっきの笑顔を思い出すとその言葉を存在させようと考えてしまって、その為なら折角なった教師という職業をも捨てていいなどと無知な事までも頭に過る。




「じゃあ、もうすぐチャイムが鳴るんで戻りますね」



腕時計を見ながら席を立った夢子の腕をすんでのところで掴んだ




「教師になった理由!…ちゃんと次まで考えとくから、次まで…。」



明日の昼休みも、明後日も、その次の日も一緒に居たくて壁は乗り越えられそうに無いけどそれでも一緒に居たいと思うのは欲張りだし自分勝手だと思う



「じゃ、これは先生の宿題だね!」



ニッともう一度見せた笑顔に、腕を握る力を弱めた。

手を振り、視聴覚室を後にする夢子に「ちゃんと前見て歩けィ」と言えばクルリと前方に向き直り走っていく




腕を握った方の手にはまだ夢子の温もりが残っているようでそわそわした


宿題なんて生徒には頻繁に出すけど、自分が出される側になるのは



「…学生ぶりだ。」



そう考えると自分が学生に戻った気がしておかしくて、鼻で笑った





ハニースマイリー



end


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20100620 00:28

ゆきの様、UP遅れてしまい
誠に申し訳ありません!!!
キリリクの沖田夢です。
勝手に教師設定にしてしまい
すみませんすみませんすみm(ry
こんな進展がない駄作品ですが
気に入って頂けると幸いです^^





Thanks to reading!!

rena ayasaki







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