副長のバースデー








「土方さぁああん!」



屯所の廊下がドタバタと鳴ったと思ったら俺を呼ぶ名前の声が聞こえた。朝っぱらから本当に喧しい奴だ。何事かと思い自室の障子を開けておくと、走ってきた名前がズリンッと足を滑らせ、ズテンッと転んだ。何回注意してもよく走る奴だと思っていたが案外バランスには富んでいるらしく転んだのは今まで見たことなかった。まぁ、いづれ転ぶだろうと予想はしてたけどな。




尻餅を付き、腰付近を擦っている名前を横目で見た



「…だから毎回言ってただろ、危ねェから廊下を走るなって」

「いたた…、それより!」



そう言って呆れている俺にどこから持って来たのかクラッカーを発射させた。パーンといい音が鳴りチラチラと飾りが降ってきた、それを振り払う。



「どういうつもりだ」

「今日土方さんのお誕生日です!」



あぁ、そういや今日は5月5日だった。ぼんやり考えていると部屋に入ってきた名前がいきなり腕を捲る



「土方さん、マヨが死ぬほどお好きと言うわけで塗ってみました!」


名前の腕と足がマヨだらけになっている。だからさっき滑って転んだんだな…、って事は廊下もマヨだらけじゃねーか!



「あとで廊下拭いとけよ」

「それより!どうですか?興奮しましたかー?」


「しねーよ!」



すると、ちぇっ…と一回言った後に



「沖田さんが教えてくれました、全身にマヨを塗って土方さんに身をプレゼントしなさいって」

「教えた総悟も馬鹿だが、信じたお前も馬鹿だな。」


少しは興奮したけど。



「あ、じゃあアレですか?トモエ5000のレアカードが良かったですか?」

「それはトッシーにあげろ」



こいつ、トッシーと俺の区別出来てねーな。どっちも俺だけど微妙に違ェのに。



「じゃあ、5月5日だから子供が欲しいんですか?」

「何言ってんだァアア!だからイヤなんだよ、お前にそう言われんのが!」



深く溜息を吐いた後に腕や足をタオルで拭いている名前に「お前見廻りは?」と聞く



「しまった!忘れてました!」


わーわーといきなり焦りだした名前はバタバタと自室を出ていった



「なんなんだアイツ」


開いたままの障子を見ながら言うと、消えた筈の足音がまた近付いてきた



「土方さん!」

「今度はなんだ、早く行かねェと…」



ぎゅっと抱き締められ俺は持っていた煙草の灰を落としてしまった



「お誕生日、おめでとう御座います」



そう言ってまた全速力で走り一瞬で部屋から消えた名前。




茫然と硬直したまま言う




「本当に、なんなんだアイツ」





end

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20100505 過去作品
副長BD記念*゚


綾咲恋菜






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