もしも俺が神ならば





「ふぅー」


深呼吸をしながら背伸びをした名前。今日は職員会議があるらしく午前授業だった。他の生徒も各々学校を後にする。そんな中、俺は名前の隣を歩いていた。



時刻は午前11時。別に午前授業ならどうせ2時間くらいしか勉強しねぇんだし休校にしてもいいんじゃねーかと心の中でほざく。まぁ終わった事だから今更気にしてねぇけど。



その時、隣を歩く名前に腕を叩かれた



「なんだよ」

「ボーッとしてたから」


白い歯を見せ、名前がニカッと笑ってから言った


「そういえばさ、」

「なんだ」

「今日授業で『自分が神様だったらどうするか』って事したじゃん?」



あーそういえば1時間目の国語でやったな。今日は出張だかサボりだか知らねーけど銀八がいなくて代わりに違う教師が来ていた



「あの先生って妄想とか好きなのかなー」

「…かもな。」



確かに国語の授業なのに『神様だったら』とか言い出した時は驚いた



「私がもし神様だったら高杉に一番意地悪するかも」


人を挑発するような笑みで言う。聞いた途端に俺は薄く笑い言った


「なんだァ?それは好きの裏返しってやつかァ?」

「ちっ、違うし!」



顔を赤くして遠くに走っていく名前。分かりやすいにもほどがある。先に走っていったアイツの近くまで急ぐと急に振り返り名前が言う



「別に好きじゃないんだからね!」

「嘘つきめ」

「嘘じゃないもん!」

「素直じゃないやつ」



嘘をついている時アイツの場合異常にテンションが高くなる事に最近気付いた。餓鬼を宥めるように頭を撫でると名前はそれが気に入らないらしく、


「私が神様だったら高杉に無理な事とか難題押し付けてやる!」


ぷぅっと頬を膨らませて言う。「例えば?」と聞くとそこまでは考えてなかったみたいで、たじたじになっていた



「まぁ所詮、名前が俺にする意地悪なんか余裕でクリア出来るけどな」

「馬鹿にすんなよバカ杉」

「うるせェ、バカ名前」



頭を軽く小突いたら後ろから追い掛けてきた



「待てーバカ杉!私にも1発殴らせろ!」


背後からドタドタと足音が近付き、バコッと鞄で背中を殴られた。ニッと笑い「仕返しだよ」と名前が言った瞬間、鞄が開き中から物が次々と落ちた


「おいおい…」

「全部落ちちゃった」


地面に散らばった物を名前が拾い集めるのを俺も手伝った


「俺に悪さしようとしたから神からバチが下ったんじゃねーか?ククッ」

「そうだとしたら神様なんて大嫌い」

「いいのかァ?んなこと言って」



最後に名前の携帯を持ちながら先を歩く



「返してよ〜!意地悪!」



午前の空に名前の叫び声が響いた





もしも俺が
 神ならば


(アイツに一番意地悪するだろう)
(でももしも俺が神ならば、)
(馬鹿なアイツを一番好むだろう)





fin.


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20100102 過去作品

綾咲恋菜






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