愛してる、いつも


ヒロイン病気設定






俺の彼女、名前は1年前に重い病にかかった。それは、




  “記憶喪失”




症状の始めは熱が40℃以上に上がったことだった。命の危険性があるということで病院で精密検査をしてもらったところ、脳に小さな煙のようなものが見つかった。最初は小さな煙だったから入院して少しずつ調整していけば治ると言われていたので言われた通りにしていた



「いつもお見舞いに来てくれてありがとうね」



昼間はバイトや学校があって名前の見舞いに来れなかったが、その代わりどんなに忙しい時でも毎日夜は通った。でも面会時間は夜8時まで。



「もう8時だ…。じゃあ、俺帰りやすねィ」

「ありがとう総悟。また明日」



俺達にはあまりにも少ない時間だった。本当に本当に、時間が足りない。

何故か。理由は、




「名前、来たぜィ」

「…どなたですか?」



せっかく取り戻した記憶でも一回眠るとまたゼロに戻ってしまう。毎晩「俺はアンタの恋人の沖田総悟でさァ。」と始めてみたように俺を見る名前に語り聞かせる。最初はショックのあまり名前の目を見てちゃんと今までの事を1から話せなかった


自分の恋人と話せるのは当然幸せな事で嬉しいハズなのに、初見の眼差しで俺を見つめる彼女を見ると悲しくなってくるから。



大体病院に着くのは夕方6時で、面会終了時間ギリギリまでの2時間で、出来るだけ語り聞かせるように記憶を呼び戻す。面会時間が終わり、渋々病室を出る。

その時点では記憶が戻っている彼女は俺にいつもの笑顔で「また明日ね!」と言う。でも俺は決して「また明日」なんて言い返さなかった。


名前に「明日」なんて無いから。名前の頭の中は次の日には記憶が消えていて、何も思い出が無い、真っ白になっているから。


名前は1年前からちゃんと1日1日を生きている。昨日の事は忘れ、次の日にはもうリセットされている。だから俺達には「明日」や「昨日」なんて必要ない。ましてや「また明日ね」なんて言葉も。


だから俺はその代わりに、



「愛してる、いつも」




そう言うんだ。





end

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20091125 過去作品


暗すぎた、かしら?






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