我儘姫君




「十四郎、アイス食べたい!」

「十四郎、歩くの疲れた!」

「十四郎、あのぬいぐるみ取って!」






「……ハァ。」




いつも、こうして名前が俺を困らせやがる。そして俺としては時々、疑問に思う事がある。我儘なアイツを俺は何故好きになったんだろうか…




「十四郎!」

「ったく、今度は何だよ。」

「おんぶしてっ」

「はぁ?餓鬼かお前は。」

「餓鬼で結構。だからおんぶして」

「なんなんだよ、お前ってヤツは。」




この前、総悟にも聞かれた。



「土方さんは名前さんのどこに惚れたんですかィ?」

「そりゃ、全てだろ?」

「疑問系で返されても…」



俺ってそういえば、具体的に名前のどこに惹かれたんだ?確かにルックスは可愛いし、最高だ。だけど中身は我儘だし、甘えん坊だし、泣き虫だし…。縁側に座り総悟と話していると遠くで山崎とミントン対決をしている名前が視界に入った。餓鬼みたいに楽しそうな笑顔を溢す名前。俺は少し、山崎に嫉妬した。


「アチョーッ」


奇声をあげ、スマッシュをおもいっきりかました名前。顔面にスマッシュが凄まじい勢いで当たり山崎が倒れる。山崎ザマーミロ。ニコニコしながら、山崎を見下しているドSな自分の彼女を俺はポカーンと見ていた。あぁやって、運動神経万能なところに俺は惚れたのか?いやいやいや、違うだろ。だったらドSなところに惚れたのか?いやいやいや、だとしたら俺はドMじゃねーか。それに関しては全力で否定する。



「土方さんは、もっと大人な人が好みだと思ってやした」

「総悟、てめー俺の彼女を貶してんのか?コラ。」

「いや、そんな意味で言ったんじゃなくて、やっぱり人間って自分と正反対な性格の持ち主に惚れるんだなと思って」




お茶をすすりながら総悟が呟いた。自分と正反対な性格の持ち主に惚れる。確かに名前は明るいし餓鬼みたいだがそれに対して俺は冷静っつうか、あまり話さねーし。甘えん坊なアイツに対して、俺は多少世話好きなとこもあるし俺とアイツは、まるで正反対だ。だからこそ、お互いにバランスが取れてんのかもしんねーな。



「そうかも知れねーな」


俺はフッと笑い、総悟の問いに答えた



「意外と人間ってバランスが取れるように出来てるんですよねィ。ってことで早くクタバレ土方」

「てめー、叩き斬られてーのか?」



そうこうしているうちに、はしゃぎながら走ってくる名前。



「十四郎、山崎くんにミントン勝ったよ!」



こーいうところが餓鬼みたいだよなと俺は心の中で呟く。



「お前強くなったんだな」


頭を撫でると嬉しそうな笑みをこちらに向けた。



「って事で私運動してお腹すいたから団子買ってきて」

「…我儘が出やがった」

「なんか言った?」

「なんも言ってねーよ。…チッ、分かったよ買ってくる」

「行ってらっしゃーい」




俺だってわかんねー。なんで惚れたかなんて。出会ったばっかの時は分かってたのかも知れねーけどなんだか今は見失ったような気がする。でもな…なんでか、ほっとけないんだ。俺が面倒見なきゃって、他の野郎じゃなくて俺が名前に構ってやりたいと。それも好きって気持ちに入るよな?




「十四郎!」



名前の呼び掛けに振り返ると、急に背中に乗っかられ苦しくなった



「ちょ!何してんだよ!」

「あたしも団子買いに付き添う、だけど歩きたくないから十四郎おんぶしてね」




また出た、名前の我儘。



「チッ…重てーな」

「そんな事ないもん!この前からダイエットしてるんだもん!」

「団子食いてーとか言ってるやつがよく言うぜ…」

「う、うるさい」




俺の最愛の姫君は今日も我儘だ






 我儘姫君


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作成日不明

土方さんは我儘な彼女さんでも
順調にやっていけそう。







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