待っていて!





「銀八せんせ−」



昼休みには必ず職員室に行く。そして向かう先は銀八先生がお昼ご飯を食べている場所、コピー室。そこで先生はいつもご飯を食べていて、訪れた私を見ると「またお前か」的な顔をして読んでいたジャンプを閉じた



「お弁当食べながらジャンプ読めるなんて器用なんですね」


そう言いながら向かい側の席に腰掛けると先生は「お前と違って器用なんだよ」と悪戯な笑みを浮かべた。普段は全然覇気が感じ取れない教師面なのに、私だけがその笑みを知っている。ライバルのさっちゃんも絶対に知らないだろうし…なんて考えただけで顔がニヤける。案の定、「何笑ってんだよ」とデコピンを喰らった。モッサモッサと出前のカツ丼を食べる先生をじっと見つめてみる



「なんだよ」


「思うんですが、聞いて良いですか?」


「質問によっては断る」


「まぁそう言わずに」


「言ってみ?」



紙コップに入ったお茶を飲んでいる先生に私は尋ねた



「ぶっちゃけ先生って私の事好きでしょ」





ブハッと勢い良くお茶を吹き出した銀ぱっつぁん。「先生汚いです」と言うと「テメーのせいだ」と怒られた



「急に何言うんだよバカ」


「好きなんでしょ?」


「あのなぁ、女の子がそんな簡単にさぁ、大人からかっちゃダメだよ」


「どうなんですか?」



私は白衣に付いたお茶を布巾で拭き取っている先生に詰め寄ってみた。テーブルを軽く叩いたら「落ち着けよ」と宥められた



「なんか…事情徴集されてるみたいで気分悪いな」


銀八先生の前にはカツ丼。そしてテーブルに両手を付けながら「どうなんですか」を連呼する私。



「確かにこの状況は刑事と容疑者みたいですね」


と笑いながら言うと


「楽しんでるんじゃねぇよ、糞餓鬼!」


そう言い、先生が割り箸をゴミ箱に投げ捨てた




「ふぅ−…」


時計を見て、昼休み終了まで後数分と言う事が分かり項垂れる私。結局私は自分が先生を好きだなんて伝えられないから、先生から言われるのを待っているだけで、でも勿論教師と生徒だし先生から言わないとか分かるから、からかうことしか出来ないんだ。第一、先生が私を好きだなんて確率は0%に等しいのに答えが分かりきっている質問をしてどうするんだよ私。



「馬鹿だな−、ホント」


心の中の声が自然と出る




「誰がだよ」


「え?あ…、先生が馬鹿ってこと」


「喧しいぞ、馬鹿生徒」


「嘘ですよ」



でもいつも私が来ると、「帰れ」って言ったり追い返したりしなかった。だからまだ望みはあるんじゃないかと期待してしまう




「先生、もう一つ質問」



先生がハッキリ断ってくれないから、また期待してしまう


「先生は、私がもし生徒じゃなかったら付き合いますか?」




「名前、今キミは何て事を言ってるか自分で理解してますか?」


「理解してるつもりですよ」



そうやって話を逸らそうとしてくる先生に「質問してるのはこっちです」と戻す。あと3分弱で鐘が鳴る。



「真面目な質問?」


「結構真面目な質問です」



すると先生は考え込んでしまった



「付き合うんじゃね?うん、多分ね」



昼休みのうちにコピーしていた教材を整えながら答えた先生はまた微笑した



「ほんとですか!?」


ダメ元で尋ねたものの、答えが答えだけに驚いてしまった



「だってお前、俺が好きなんだろ?」


「なんで分かるの!?」


「いや、バレバレだし」


「ウソォォオ!」




先程とは逆転。
あたふたと慌てているのは私で、余裕気なのは先生。



「でも、生徒じゃなかったらの話な。」



その一言で私は尋常じゃないほどのショックに襲われる



「皮肉ですね、生徒とか教師とか。」


お弁当を片付けてコピー室を出ようとした時、先生に引き留められた



「そんなに落ち込まなくてもいいだろーが」


「フラれて落ち込まない方が可笑しいでしょ。なんだよ畜生」


「お前さぁ、話聞かなすぎ。」



溜め息を吐きながら、抱き寄せられ私は銀八先生の胸に飛び込んだ



「ちゃんと話は最後まで聞こうって小学校で習わなかったのか?」


「でも…」


「いいか?ここからが重要だからちゃんと聞けよ」




まだコピーが終わらないみたいでガーガーと言う音が邪魔をするが、



『卒業したら付き合ってやる』



耳元で囁かれた言葉は確かにそう聞こえた



「本当ですか!?」


「まぁ、卒業したら生徒じゃなくなるし。」


「ドッキリとか無しですよ?」


「どんだけ疑ってんだよ。オラ、次の授業始まるぞ」


早く行けよと促され、私はコピー室を出る




「先生、浮気しちゃダメだよ?」


「お前も留年とかするなよ」


「分かった!あと、先生」


煙草に火を付けた先生の白衣をグイッと引っ張り、銀八先生の頬にキスした



「卒業するまで、待っててね!」



目が点になっている先生に手を振り、私はチャイムが鳴り響く廊下を走った





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作成日不明


長いのにわざわざ
読んで下さったあなた
有り難う御座いました






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