ナマケ教師と助手
春風が少し開いた窓から入る。
まるで新学期の到来を今か今かと待っていたかのように。桜の花びらが吹雪いて2,3枚入って来た、そんなこともお構い無しにざわめく教室。今日から私達は3年生に進級し、そして私はこの教室『3年Z組』に所属する生徒。
2年生で同じクラスだった山崎くんも一緒のクラスだし。まぁ彼の場合存在感はあまり無かったけど。みんな個性的な人ばかりで高校生最後の楽しい1年になりそう。聞けば3Zに新しい先生が来るんだとか。
どんな先生が来るのか凄く楽しみ!と思っていると、チャイムと共にドアが開き白衣を来て、ずり眼鏡+歩き煙草の白髪頭の先生が教室に入って来た
「新学期早々うるせーぞ、お前らァ」
気の抜けたような言葉を吐き捨て、ぺったぺったと教卓へ向かう先生。教室内で『アイツ教師?』とか『教師が歩き煙草?』とか色々野次が跳ぶなか、その先生は黒板に坂田銀八とフニャフニャした字で書いて言った
「えー、コホン。今日から3Z担任の坂田銀八でーす。好きなものは甘い物。嫌いなものは…まぁ、授業です」
その後、すぐに「じゃあ、なんでアンタ教師になったんだよ!」と新八くんにつっこまれたのは言うまでもない。
そんな3Z生活の初々しいような初日から早いものでもう1ヵ月。ジャンプを読んでばっかりだし毎日ダルそうだし校内で煙草吸ってるしやる気がないような銀八先生に、
「お前は俺の助手な?」
そんな無差別な役目を押し付けられてから1ヵ月経ちました
「相変わらず、お前はパシりにされまくってんなァ、名前」
今回は銀八先生から『小テストのプリントを印刷して配ってくれ』とのことで無事任務を終え、教室に戻ったところ土方くんに言われた。なんだよ、その蔑んだような目は。私だってやりたくてやってんじゃねーんだよコンチクショー!でもやらねーと成績落ちるからこれ以上落ちたら大変だから仕方なく引き受けてんだよマヨラーコノヤロー!
「そうよ、あのナマケモノのために仕方なく引き受けてんの!」
『ナマケモノ』を強調して発音するそれがポイント。ってなんのポイントよ。すると土方くんが私の背後を指差して「その“ナマケモノ”って奴がまたお前に用があるってよォ」と薄笑い気味に言った。慌てて後ろを振り向くと、
「あらまぁ、ナマケ…銀八先生」
「また助手の仕事だぞ」
ドSな黒い笑みで任務発動を宣告した。なんなんですか、この人は。一体私をどうしたいんですか?たくさん働かせて過労死させたいんですか?そんなに私を疲労させたいんですか?職務放棄と殺人未遂で訴えるぞコノヤロー!
「うん、やっぱり助手いたほうが楽だよな」
お前が楽なだけだろアホ、こっちは大変なんだぞ
国語の教材室を整理整頓している。それが10分や20分で終わるような域じゃなくてもう散らかりようが半端ない
「手伝って下さいよ!」
「俺こっちで忙しいから」
ジャンプ読んでるだけじゃねーかァアア!と心の中でシャウトしながら近くにあった図鑑を先生の頭目掛けて投げた。が、ナマケモノの癖に変に反射神経が良い先生はすかさずジャンプを盾にして図鑑を避けた。先生の横を通りすぎバタッと落ちた図鑑
「ったく、何すんだよ」
「すいません、手が滑りました」
「わざとだろ、今のわざとだろ」
そんなことを続けながら黙々と整理整頓をした
「あぁ、やっぱ片付けは疲れるよな」
「片付けたの全部私ですけど?」
疲れたフリをしている先生に咄嗟にツッコミをいれると『まぁそう怒るな』と宥められ溜め息を吐く
「そう言えば1ヵ月前から聞きたい事があったんですけど」
「お、なんだ?ギン肉マンの事ならなんでも聞けよ?俺なんでも知ってっから」
アンタがギン肉マンに詳しい事なんて興味ねーよ
「なんで銀八先生の助手が私なんですか?」
「イヤか?」
「イヤって言ってもどうせ止めさせてくれないでしょ」
言うと立ち上がりながら先生が『ご名答、なかなか分かってるじゃん』と微笑した
「理由くらいは聞かせてくださいよ」
それとなく聞いてみると少し考えた後に
「もう少し経ったら教えてやるよ」
そう言い、私の頭にポンっと手を置いた
「え〜、今じゃないんですか?」
机の上にうなだれると白衣から何か取りだし私の前に置いて
「ご苦労さん、これ報酬だから。じゃあな」
教材室からぺったぺったと去っていった。それを暫く見届けてから先生が置いていった物を確かめる。片付けてくれたお礼とか貰えるんだろうとちょっと期待したが…
「これ校長の触角ゥウウ」
10%でも期待した私が馬鹿だった。握り締めるとふにゃんと折れる蒟蒻のような物体…。気持ち悪い。
「いらねぇんだよ!」
と叫びながら私は廊下に物体を投げ捨てた
明日からもこんな日が続くのかと思うと物凄いストレスが溜まる
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作成日不明
ギャグを書くのが好きです。
綾咲
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