糖分卒業大作戦
「銀ちゃん来たよ−」
「お−う、名前」
今日のバイトは運良く午前で終わり速攻で万事屋へ向かった。生憎、今日は神楽ちゃんも新八くんも留守にしていて銀ちゃんだけが私を迎える。
「今日駅前のお店でプリン買ってきたんだ」
そう。さっきバイトが終わった帰りに寄り道してプリンを買ってきたんです
「銀ちゃん、甘いもの大好きでしょ?嬉しい?」
バイト先の人もあの店のプリンは美味しいって言ってたし、銀ちゃん甘いものが大好物だし、すっごく喜ぶんだと思っていたが、
「うーん…」
顎に手を添え考え込んでいる様子の彼。っていうか辛そうな顔してない?
「ど、どうしたの銀ちゃん!ひょっとして甘いの嫌いだった?」
「いや、大好きなんだけどよォ。俺もそろそろ糖分控えねーと死んじまうかなって」
「銀ちゃん死んじゃうの私はイヤだよ」
そう言うと銀ちゃんが私に優しく微笑んだ
「俺も名前と離ればなれになるのイヤだよ。だから糖分控えようかなーってな」
「そっか銀ちゃんエロい!じゃないくて偉い!」
「そこ間違えるなよ…」
さてさて、そうなったらこの行き場を失った美味しそうなプリンはどうしましょと私が考えていると無意識にじーっとプリンを見ていたのを気付かれたらしく、
「俺はジャンプ読んでっから名前食べちまえよ」
「え、でも銀ちゃんがプリン我慢するなら私も我慢する!だから…捨てる」
「いやいやいやいや!捨てたらプリン様可哀想だから!プリンの神様出てきて半殺しにされるぞ!?」
恐らく彼は今、自分の甘党の本能と戦っている最中。だから私は彼の我慢の妨げになるものを排除しようとしたんだけど…銀ちゃんは食べられなくてもプリンを神様のような存在だと思っていらっしゃるようで…。
「よし!こうしよう」
テーブルに置いてある箱を見つめしばらく考え込んでいた銀ちゃんが口を開いた
「名案が浮かんだの?」
「まあな。要するに俺はプリンを我慢したい、けど味はどんなのか確かめたい。…そこで!」
「そこで?」
「名前がこのプリンを食べて俺にキスしてくれ」
「うん!それ、いい考えだね!……って、えぇええ!?」
本当に銀ちゃんは稀に可笑しな事を言うからその度に驚かされる。目を見開き私が暫く硬直していると、
「そんな驚かなくてもいいだろー、俺は名前の彼氏だし」
「それはそうだけどさー…」
「んじゃ、早くプリン食って俺にチューしてくれよ」
早くプリンの味が知りたいからなのか「早く早く」と急かしてきた。いつもキスはしている筈なのに改めると結構緊張するなぁ…なんて思うと顔が熱くなる。冷静を取り戻しながら箱からプリンを取りだしフタを開けスプーンでプリンを口に入れた
甘い匂いが口いっぱいに広がり、つい「美味しい」と叫んでしまう。私が喜んでると横から唸り声と痛いほどの視線を感じる。
「ご、ごめんごめん」
「許さねぇ」
謝るとそんなことをいいながら銀ちゃんのほうから口付けてきた
待て待て!とビックリするほどの深いキスで呼吸がもたなくなる。力なく銀ちゃんの肩付近を叩くと、ようやく解放された。
咳をしながら息を必死に吸う私は過呼吸寸前です!チラッと横を見ると、舌なめずりをしてニコッと笑う彼。
「やっぱ、うまいな」
なんて呑気に言いながらも私の背中を擦ってくれた。咳がなんとか治まり「長かったよ!」と彼の腕当たりを軽く叩こうとしたら、またまた彼は考え込み始めてしまった
「やっぱ、甘いものは俺と命を繋ぐものだもんな…」
「銀ちゃん?」
「もう何年も食い続けてきたのを今更セーブするなんて無理だと思うんだよね俺は」
「お−い、銀ちゃ−ん」
「あ、名前。俺やっぱ甘いの我慢するの無理だわ。」
「えっ、えぇええ!」
「だから今からパフェ食いに行こうぜ!」
そう言って私の腕を引っ張っている。というかさっきまでの『我慢する』とかそういうのはどうなったわけ!?何とも言えない感情が私の中をモヤモヤと掻き回る。
「銀ちゃん!ちょっと!」
「名前。俺はお前と糖分さえ傍に居てくれればそれだけで幸せだ」
彼が真顔で言ったので惚れ直しそうだったけど、いやちょっと待てよ。
「…糖分控えないんかい」
「バレた?」
ほとほと彼には呆れますがその無邪気な笑顔を見ただけでまた好きになってしまいます
「早く行こうぜ」
「もうしょうがないなぁ」
疲れるけど銀ちゃんに付き合いきれるのは私だけ。
糖分卒業大作戦、失敗です
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作成日不明
確かに甘いものは素敵。
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