紫色

「晋助君の髪、ちょっと紫っぽいね」

ソファーに寄り掛かっていたら俺の髪をやんわりと触った名前の声が頭上から聞こえてきた。

「紫ってね、スケベなんだよ」

クスリと笑った音がして、ワケわかんねェと思ったが「理由は」と一応お望み通り問うてやった、すると

「欲求不満の色だから」

と今にも吹き出しそうに笑いを堪えながら名前が言った。勝手に言ってろ。そう思い無視したが気付けば俺の髪から離れた名前の両手はその今にも開いてガッハッハッと盛大な笑いを生み出しそうな口を硬く押さえている。そんなに今の面白かったのか?俺は笑われていることが気に食わなくて頭に置かれている名前の小さな柔らかい手をぺちっと叩いた。

「いたっ、あはは、ごめんごめん」

暫くは名前の口から笑いが絶えず溢れたが、漸く止まり静かに「でも好きだよ、晋助君の髪」とまた俺の髪で遊び始める。ソファーに座り俺の肩あたりまで伸ばした名前の両足を持ちながら俺は上を向き、名前に目を合わせる。

「何?晋助君」

と髪の毛をぱっと離し、目を丸くして俺を見る名前に「俺の事は?」と聞いた

「俺の事は好きか?」

その質問をしっかりと聞き入れた名前は目を閉じて一度ゆっくり小さな呼吸をした後に、

「嫌い」

と言ってゆっくり目を開けた。がっかりした反面、その「嫌い」の言い方にも色々なニュアンスや雰囲気などの違いがあることを知る。今のはきっと温かいほうの「嫌い」の言い方なんだろう。俺も昔は散々悪いことを仕出かしてきたもんで色々な奴に「嫌い」と言われてきたがこんなのは初めてだ

「晋助君はお兄ちゃんだから」

綻んだ笑顔をしているのにそんな一気に現実味を帯びた言葉が名前から降ってきた。俺はそれを払うように名前のほうを向いた。顔だけじゃなくヘソごと名前のほうへ向けた。

「血は繋がってないけど、晋助君はお兄ちゃん」

だよ、と呟いた名前が困ったように微笑した。ずっとずっと名前が遠く見えた。今ここで、俺のすぐ前にいて、俺の髪を触ろうと手を伸ばしているのに、遠い。俺の髪をふわりと掴んだのに、遠い。

「だけどね、」

その言葉を止めてしまったのは俺だった。名前の桃みたいな白い頬に触れた俺の手が驚かせてしまい言葉を制止させてしまった。暫く沈黙したままそうしていると「晋助君」と名前が俺の手の上に手を重ねてきた。

「でもずっと忘れないと思う、晋助君は特別な存在だから。私の中で、晋助君のこの手も、晋助君の紫の髪も。」

もっと違う出逢いをしていれば俺のこの「お前を手に入れたい」という欲求は満たされていた。でも残念ながら世の中うまく行かねェことばかりだ。ホントぶっ壊したくなる。「暖かいね」そう言ってフフッと微笑んだ名前に顔を近付けた。ソファーから、だらんと垂れた2本の白い足に触れるとぴくりと震えた。ルールを犯しても、世間体を無視しても、俺には手に入れたいものがある。

「晋助君…」
「俺にはお前が必要だ」
「……、」
「お前しか必要ねェ」
「お兄ちゃん」
「名前」

太ももに手をかけ、口が触れるか触れないかの間際だった。がちゃりと音がして「ただいま」という妙に明るい両親の声と同時に俺達二人は何事もなかったかのようにテレビのワイドショーを観る。部屋に戻ろうとした俺にソファーからちょっとだけ顔を覗かせた名前が小さな声で「すけべ」と笑ったのが背中越しに聞こえた気がした

「…るせェ。」

俺は紫がかった自分の髪を手でくしゃりとした

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20010509 01:57

途中で書いてる自分も
意味がわからなくなった←
ご兄妹設定\^^/

綾咲


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