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目が覚めた頃にはもうお昼を過ぎていた。凄く強力な睡眠作用のある怪しい液体を飲まされた昨夜、一体私はあの男に何をされてしまったんだろう。今まで守ってきた…というか守らされてきた貞操はもう奪われてしまったんだろうか。そういう恐怖で体がガタガタ震えた。父上母上が知ったらどう思うかな。悲しむかな、それとも私に失望し幻滅するのかな、もうこの家の子ではありませんなんて言われたらどうしよう!

「随分と熟睡してたようなんで起こさなかったんですが」

勝手にドアを開けて平然とした顔でこちらに向かってくる沖田にクッションを思いっきりブン投げた。しかし残念ながらばふっとキャッチされてしまい、私はもう一度クッションを構える。

「来ないで!それ以上来たらこれも投げるよ!」
「どうぞ」
「なんなの!?」
「執事でさァ」
「じゃなくて昨日のアレはなんだったの!?あの液体は何!?私はあの後何もされてないでしょうね!?」

もの凄い形相で睨み付いている私。それを見て爆笑した沖田はカーテンを開けた後にポケットから昨日の小瓶を取り出して「これァ、疲労回復効果がある睡眠薬ですよ」と言った。

「笑わないでくれる!…なんか気分悪いから」
「それにしてもあの時の焦ってるお嬢さんの顔、ありゃ傑作でした」
「アンタ、Sなのね?Sなんでしょ?」
「あらら、今までお気づきにならなかったようで」

片眉をあげてこちらを向いて嘲笑しているこの人、執事に見えない。絶対執事じゃないような気がするんですけど…でも上着には執事だけが付けるのを許されているが黄金のペンダントが輝いている。こんな性格の人でも執事になれるなんて世も末だと思うと自然と溜息が漏れる。

「ご不満なようですが」
「大変ご不満よ」
「こんな俺でも執事になれるっていう世の中にですかィ?それとも昨日馬鹿みたいに焦ったご自分に対しての不満ですかィ?」
「相当ドSなのね、何回も人の思い出したくないことばかり突いてくるなんて」
「ドSはお嫌いですかィ?」

ベッドから起き上がった私は窓際に寄りかかっている沖田のネクタイを掴んで「大、好、物!」と悔しさ半分逆襲半分の感情を全てこの一言に込めて叫んでやった。ぺたぺたと寝室から出ていく私を追ってきた沖田は「そうこなくっちゃ」と踊った声で発していた。

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