プツン
…という音をたて私の持っていたシャーペンの芯が折れた。普段筆圧が濃くない私がこんなに力を入れてシャーペンを握っているのは珍しく、それもこれも全部隣の席の坂田くんのせいでストレスを感じるからである。
「なぁ、ごめんってば。さっきはちょっと調子に乗っただけだよ悪かったよ」
「………」
「ホント悪かったから。ってかお願いだからシカトはやめてくんない?」
泣きそうになるから…と真っ正面の黒板を見ている私を真横から凝視する坂田くん。大体今は授業中。こっちは授業に集中してるんだからシカトするのも当たり前だろ、と言ったら泣いちゃうのかな。
「なぁってばー、シカトすんなってばー」
「先生!坂田くんが煩すぎて集中出来ません!」
先生に訴えると坂田くんに問題を解くように先生が指名した。
「坂田くん、この問題を解きなさい」
「あん?俺今忙しいんだけど。ティーチャーだったらそこんとこ空気読めよ」
逆ギレをした坂田くんに怖じ気づいて授業を再開してしまった先生。…と、すぐに私の方へ向き直り話し掛けてくる坂田くん。先生に頼る作戦も坂田くんの前にはこれっぽっちも効かないようだ。
「おいシカトすんなよー」
言いながらクルクルと私の髪で遊んでくる。とても授業に集中出来ない。
「分かったから分かったから!」
「よっしゃ、やっと口訊いてくれた!」
無気力だった顔が一瞬にして生き生きした表情へ変わる。その輝きを取り戻した坂田くんを見て少しだけカッコいいかもと思ってしまった。そんな私は末期ですか…、セクハラ発言に悩まされているのにその相手をカッコいいだなんて、笑えない。
「変な事とか言わなきゃカッコいいんだろうけど…」
頬杖を付き、勿体ないなと呟きながら横を見ればまるで栄養を満タンに蓄えたように元気な坂田くんがいて、
「そんじゃ夢子も機嫌直した事だし、今日の放課後はラブホ行くか!」
「行かねーよ死ね!」
たった一時とは言え、この人に惚れ掛けた自分は大馬鹿者だと私は悟った
..
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