「どうしてこうなるの?」と聞いたらきっと多分、ていうか絶対呆れる言葉が返ってくるだろうから聞かない。その代わり私はこう言う。



「とりあえず帰りたいんですけどいいですか」



半泣きでそう呟いた私は今制服を着ているわけで…。制服って言っても我が校のではなくセーラー服にレースが付いてたりスカートが極端に短かったり、簡単に言うとド変態くんが後輩に借りてきたとかなんとか…。見るからに気が引けるその衣装を前に佇んでいた私の制服に間違ったフリをしてペンキをバシャッと掛けたド変態坂田を地獄送りにしたのは10分前。で、その制服はペンキでベタベタなのでそのまま着ているわけにもいかず、着替えも持ってきてないし、仕方なくそのド変態が用意してしまったブリブリの制服に着替えなくてはならなくなった。



「うん、可愛いと思う」



顎に手を添えて私の事を舐めるように見ている男子。あれ?この人はさっき屍にしたばっかりのド変態坂田くんではないか!なんで生きてるの!?



「坂田くん、」

「あ、ちゃんとクリーニング代払うから」

「そうじゃなくて。坂田くん、」

「ちょ、一回写メ撮っていい!?」

「…死んで。」




今まで以上に物凄い殺気を身体中から沸き上がらせている私を見て流石にヤバイと思ったのか「冗談だってば」と言った後坂田くんがどこかへダッシュしたと思ったら被服室から予備の我が校の制服を借りてきた。



「あの…なんか調子乗ってすいませんでした。文化祭だからって調子乗りました」

「調子乗りすぎだよ、まったくもう」




着替えて漸くブリブリセーラー服から解放されて落ち着きを取り戻した私。解放感から、ふぅっと伸びをしていると坂田くんが傍で何か言いたげにこちらを見ていた



「どうかした?」

「いや別に何も無いです」

「そう。」

「あ、やっぱある!」



一度「無い」と言われて自分の持ち場に戻ってクラスメートの手伝いをしようと足を進めたが、呼び止められてクルリと振り返る




「あのさ、」

「あの服ならもう二度と着ないよ」

「いや、そうじゃなくて」

「なんですか」

「やっぱ、夢子はこの学校の制服が一番似合うなーと思って」

「急に何言ってるの坂田くん」



ほんの数秒前までバカコメディな雰囲気を醸し出してた坂田くんがいきなり真顔になり全身鏡の前に立った。次に「俺も似合う?」なんて聞くから一回だけ頷くと「そっか」と安心したように、でも切なげに笑う。



「急にどうしたの?」

「うーんとね、」

「?」



私が聞き耳を持つと坂田くんは一度黙ってからヘラリと笑い「やっぱなんでもない」と言った。私にはその発言がいつもと違った雰囲気に感じたから気になったけど、



「今日は白だ」

「あ!てめっ、ぶっ殺す!マジでぶっ殺す!」



少し考え事をしていた隙に坂田くんが後ろから走ってきて通りすがりに私のスカートを捲っていった。やられた!と心の底で叫んだ後に彼を追い掛け始めた私は後半の出店の担当なども忘れて夢中になって彼を追いかけ回していた






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