朝、学校に行く前に必ず見ていく結乃アナのブラック星座占い。最近当たる確率がまた増加したという噂で注目のイチオシコーナーである。
『今日1番ラッキーなのは天秤座のアナタ!今日は誰かの救世主になれるかも!困っている人に迷わず手を差し伸べてみて!』
ぶっちゃけ1位にしか興味が無い私は残りは見ずに家を出た。すると昨晩に降った雨によって出来た水溜まりが道路にあり、トラックが前から物凄い勢いで迫ってくる。
「…うわ、絶対水かけられる」
と思った途端、物凄いスピードで後ろから来た誰かに抱きかかえられた。見るとその人はノーメットにゴーグルの坂田くんで原チャリを運転していた
「あっぶねぇ」
「あ!ありがとう坂田くん!」
トラックが水溜まりに到達するまでにすれ違えたから辛うじて水をかけられるのは避けられた。まさか坂田くんに助けられるとは思ってもいなかったので呆気にとられ何も言えずにいると、あっという間に学校についてしまった
「礼なら、夢子の体で十分だよ」
「ごめん。助けてもらってアレなんだけど相当気持ち悪いよ」
「マジでか」
駐輪場で原チャリから降り校舎へ向かう。教室に入ると朝から男子生徒が室内でキャッチボールをしていた。危ないなぁ…と思いながら席に急ぐと「やべ、ミスった」という声と同時に私の方へボールが飛んでくる。
「うわわわ!」
すると誰かに抱き付かれ、そのまま私の身体は後ろに倒れる。その間をボールが通っていった。
「…っもう!危ないな!」
危うくボールが顔面にクリーンヒットするところだったよ!起き上がると「危なかったな」と手を差し出す坂田くん。どうやら彼が助けてくれたみたい、本日2度目。
「あ…有り難う、坂田くん」
「てめーらァアア!死ぬ覚悟は出来てんだろーなァアア」
スカートのホコリをほろっている私の前に立った坂田くんは男子生徒を凄い険相で睨み付け怒鳴った。そのあとその男子生徒達はボロボロになって廊下に倒れていたんだとか…。
「坂田くん…そこまでしてくれなくても大丈夫なんだよ?」
「いや、夢子を傷付ける野郎は未来の夫が許さねェ」
あまりにも酷い暴れっぷりだったので一度坂田くんが頭を冷やすように屋上へ連れてきた。爽やかな青空が広がる。
「あ…、」
ふと朝のブラック星座占いを思い出す。私の星座は見てこなかったから分からないけど多分私は12位かな…。
「坂田くんって天秤座?」
「そうだけどそれがどうしたんだ?」
「救世主…か。」
頭の周りにクエスチョンマークを散りばめた坂田くん。いつもは坂田くんだって見てくる筈なのに今日は占い見逃したのかなと思いながら彼を見ると、欠伸をしながら屋上の出入口へ歩き出した。
「教室戻ろうぜ、眠くなってきた」
やっぱりブラック星座占いの当たる確率は本当に増加しているんだと確信する。
「坂田くん。えーっと、助けとくれて…有り難う」
「お礼に抱き枕お願い出来る?」
「………。」
…眠いから。とまた大きく欠伸をした坂田くんは私にダランと身を預けてきた。それを「重い」と言いながら退けた私は少し考えたあとに救世主に向かっていう。
「抱き枕じゃなくて膝枕くらいならいいよ」
..
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