ちょうど抱えられる程度の段ボールを前に、いつもの様に祖母からの仕送りの中身を確認するサソリ。
大半が畑で採れたり近所で貰ったであろう野菜や米、それに毎回入っているのが昔から食べ慣れている駄菓子の数々。
もうガキじゃないんだから正直これは送ってきて欲しくないと思いつつ、幼い頃はよくせがんでいた物だからと、情けにも似た気持ちで受け取っていた。その殆どが、今や恋人のデイダラの腹に入っているとも祖母は露知らず。
ふと、そんな仕送りの中身に一枚の封筒が。眉を潜ませながら手に取って中を見てみると。
「カップルで着よう、一日浴衣貸出し着付け無料クーポン券…」
間違えて入れた物なのか、いやチヨバアなら入れ兼ねない。特にメッセージもなく無造作に入れられたそれを呆然と見つめるサソリ。
すると、後ろから近づいてきたデイダラにパッとそれを取られ、まじまじと見たかと思うとすぐに楽しそうに笑いながら声を上げた。
「浴衣か、いいじゃん!無料だし着てみないか、サソリの旦那」
「…そこの店どこか分かんねぇし」
「待って携帯で調べる…ヒット!電車一本でいけるぞ、うん」
「早っ、…でも浴衣着てその後どうすんだよ」
「今日グッドタイミングで近くでお祭りと花火大会やってるってよ、出店も出るしここ行かねーか?」
「この、何でも携帯で決めちまう現代っ子が」
「いいじゃーん行こうよお祭り、着ようよ浴衣、せっかくの夏なんだから、うん!」
「でもな…」
実は暑いのが苦手なサソリ。クーラーで冷えた心地よい部屋から離れたくもないし、いちいち浴衣なんぞ着て人混みがヤバそうな祭りなんかにクソ暑い中行くのも…とかなり渋る。
そんな彼を、次の一言でデイダラは見事に動かした。
「お祭りデート、行こうぜ!旦那!」
「…!」
デート…?
「…ふん…ったく、しょうがねぇから行ってやるよ、ああ暑いのに面倒くせぇな」
悪態をつきつつも、早々にクーラーを切り出掛ける準備に取り掛かる。彼の事を分かり切っている故に、デイダラは嬉しそうに後を着いていくのだった。