何故だか見事にオイラだけの記憶を根こそぎどっかにやっちまった、こちらサソリの旦那。悲しい事に、この人はオイラを暁の新入りだと信じて疑ってねーみたいだ。

そんな旦那を連れて(いや、旦那にとっては新米のオイラを引っ張ってるつもりだろうが)、丸投げしやがったリーダーからの指示で、通常通りの任務に赴いていた。組織の邪魔となる可能性のある忍衆の暗殺、それが課せられた任務。
うん…?確かこれって、オイラが本当に暁入りたての頃に、オイラのミスで危うく失敗する所だった任務に似てるかも。もしかして、リーダーちょっとはオイラ達の事考えてくれたのかな?

そうなりゃ、今こそあの時の汚名返上のチャンスだ!記憶の飛んじまっている今、サソリの旦那にコイツは使える優秀な相方だなと思わせる、絶好の機会じゃねーか!
密かに握り拳を作り、旦那に気付かれない様に気合を入れるオイラ。早くこいこいターゲット!


「…!おいデイダラ、アイツらが例のターゲットだ」

「おう」

「今回は、新入りであるお前の実力がどれ程かを確かめておきたい。オレは手を貸さないから、単騎のつもりでやれ」

「…お安い御用だ」


オイラは一旦旦那と別れ、草陰に身を隠しながら敵の様子を窺う。
やっぱり、昔の出来事を繰り返してるみてーだ。確かあの時も、旦那は似た様な台詞をオイラに言ったと思う。
今、旦那の記憶にオイラが失敗したという記憶はない。優秀なオイラに塗り替えちまえばいいんだ!よーし…これは失敗なんか許されないぞ…うん。

相手は、二…三、いやフォーマンセルか。他に仲間がいそうな雰囲気は…ない。
先ずは、そうだな…。こちらに気が付いていない事を利用して一匹仕留めるか。旦那が見ている事も考慮して、少し派手な戦法も見せたい所だな、うん。
C1で警戒させ誘導、粘土分身、地雷爆弾…。C2以上の起爆粘土が使えないのがネックだが、まあこれは後々の為に取っておくとして。
さあ、準備は整った。オイラの芸術パフォーマンスの始まりだ…うん!


一つ、上からの先制攻撃。一人の頭で爆発が起こる。…先ずは一匹。他のヤツらは動揺を見せたが、流石切り替えが早いな、もう警戒態勢だ、そうこなくっちゃな。
口火を切り、ヤツらの周囲に爆発を起こさせる。オイラの位置を探してる様だが、無駄ムダC1は独りでに勝手に行動出来るからな。
良い感じに巻き上げられた砂煙が視界を遮る。僅かな煙の動きも見逃さねー。まだあそこから動いてないみたいだな。ここで粘土分身の登場だ。
オイラのいる位置と真反対に設置した分身。ヤツらがそれを分身と見破れる訳がなく、そしてこの砂煙。捉えられた影に向かって忍具を放つが、分身を操ってそれを弾く。
来た、行動を移した。オイラの計画通りだ。近距離に持ち込もうとする一人の敵。思いきり急所に一発をかます、…オイラの分身に。
途端に分身はボロボロに崩れ、溶けた分身が相手を捕らえた。そして慄き驚嘆する…オイラの分身の爆発ッ!
コイツには少々チャクラをいつもより多く練り込んだからな、周囲十数メートルを吹っ飛ばすぜ。
砂煙も吹き飛ばす凄まじい爆風。巻き込まれない様にと、激しい風に巻かれながら後ろに飛び退く残りの二人。爆発の安全圏へと足を着いた瞬間、オイラはニヤリと口角を上げる。


「終わりだ、…喝ッ!!」


瞬間的に地面が弾け飛び、逃がす間も与えずに、隙に仕掛けた地雷起爆粘土でボカンだ。
少し地味すぎたか?もう少し相手に張り合いがあれば、魅せる戦いも出来たのによ。



戦闘後。変形した地形の元で、相手の生死を確認するオイラとサソリの旦那。まー確認と言っても、肉を一つ残らずふっ飛ばしちまったから、それも何もないけどな。
正にオイラとしては完璧な任務遂行。満足のいく結果に、旦那からの返答を心待ちにしていた。
オイラはわざと、本当の新入りメンバーかの様に振る舞い、自信満々を隠しきれてない顔で旦那を窺った。


「どうだったか、オイラの戦いっぷりは?」

「…ああ。思っていたよりそこそこいいな。自分の能力を活かして戦法も考えていたし、相手の動きも十中八九読めていて誘導も申し分ない。そして何より、お前は目が良いんだな。砂煙の中で相手が動かなかったにしても、見ている限りお前は相手をしっかりと捉えられていた」

「う…おお…」

「お前、歳いくつだ」

「え、19…だけど」

「まあ相応か。だが、暁の中では良い線言ってると思うぜ。オレの今後の相方としても…なかなかな」


う…うわわわわ…!オイラサソリの旦那にめっちゃ褒められてるぼろくそ褒められてる何だこれ夢だ奇跡だ幸せだァァァァァァ!!
ここまでオイラを褒めちぎる旦那初めて見たぞオイ!?なに、記憶失って人格もちょっと変わってる!?いやでもいいや、オイラめっちゃくちゃ嬉しい…今まで罵倒しかされてこなかったからいやそこまでじゃないけどオイラを褒める旦那とかレアすぎるから…!当初のイメージを払拭とかそんなレベルじゃねー…最早上書きだ。

よし…このままの調子で、オイラの悪いイメージをどんどん上書きしていくか!
今思えば…青臭かったオイラは、旦那にスゲー迷惑かけてたかもだもんな。
これも神からの思し召しっつー事で、もう暫く記憶(オイラだけ)を失くした旦那と一緒にいてみるか。





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