「サソリの旦那」

「何か用かデイダラ、部屋の片付けなら手伝ってやらねぇぜ」

「ち、ちげーよ、うん!…でも、何でオイラが今部屋の掃除してるって分かったんだ?」

「何せ隣だからな、ガサゴソ五月蝿いったらねぇ」

「……すんません」


「冗談はさておきだ。用件は何だ」

「…あのな、旦那」

「だから何だよ」

「…、旦那が、オイラの芸術を認めたくないっつーか…興味皆無なのは分かってる。だけど、敢えてこれを渡す!」

「…あ?…何だよ、ソレ」

「部屋の掃除してたら、棚から落ちて無くしちまってたこれが出て来たんだ。オイラの…最初に造った芸術作品だ…うん」

「……」


「えらくガキの頃でさ、今のオイラからすれば黒歴史みたいなもんで、ホント下手くそすぎて笑っちまうんだけど」

「…」

「なのに…何故か捨てられなくて。でもまたきっと埃被って放置されちまうだろうから、それなら…オイラにとって特別な人に持ってて欲しいなって、そう思った」

「………貸せ」

「ヘッ?あ、う、うんっ」


「…何だろうな」

「え?」

「意外だった。いっつも一瞬の美だ爆発だと騒ぐお前が、こうしてガキの頃の物を未だに持っているなんてよ」

「自分でも分かんねーんだよ。それ、粘土が固まっちまってチャクラを練る事も出来ねーし、かと言って下手な作品でもごみ箱にポイは、オイラの芸術に反するっつーか…」

「ほう…」

「でもオイラは持っときたくない!要らない!ハズい!!」

「フ、…分かった。じゃあこれは、オレが貰っておく」


「あ、…へへへ」

「何笑ってやがる」

「ほら、オイラの作品って時が経つと必ず昇華して何も残らなくなるだろ?だけどこれは、ずっと残ってる。旦那の元で形として残る。…なんか嬉しいんだ」

「それは、お前の芸術理論に反するぜ?」

「まあソイツは、もうオイラにとって芸術作品でも何でもねーから、うん。やっぱ旦那の芸術理論も悪かねーな!」

「……!…悪かねーじゃねぇよ良いんだよ」

「全くこの人は…」


(素直じゃないが、他人の芸術を認めるまでになったか。コイツもコイツで、成長してるって事だな…)

「サソリの旦那」

「あ?」

「受け取ってくれてありがとな。それと、11月8日…誕生日おめでとう」

「さしずめこれが誕生日プレゼントって訳か。…芸術家として、後輩の成長をこの日に見られるのは、嬉しい限りだな」





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