「ヒマァ〜〜〜…」


小鳥達の平和的なチュンチュンと鳴く声の中に、気の抜けた人間の声が響く。
沢山の樹々に囲まれ控えめにそこに建つ小さな建物の前で、そのやる気のない声を発した持ち主が座っていた。


「角都遅い〜〜!どんだけ待たせてんだよ〜もォ〜!」


自分の膝をポカポカと叩き、と同時に胸元に飾られた妙な形のネックレスがチャリチャリと鳴る。
ムスッと大きな眼を吊り上げご機嫌ナナメのこの人物。
名を飛段と言い、某組織“暁”のメンバーの一員だ。背中には女性が持つにはさぞ重そうな大きな三連鎌を背負い、白い頬を膨らませ不服の表情をしていた。
彼女がこんなにも怒っている理由…それは。


「角都のバイトって時間かかりすぎィー。お金の何が大事か分かんないー。とどのつまり早くしろォ〜バカクズーー!」


「よぉーネエちゃん、随分と退屈そうだなぁ」

「んー?」


暇に嘆く飛段の前に、突然現れた複数の男達。ニヤニヤと薄気味悪い笑みを浮かべて、座る彼女を見下ろす。
見るに、忍ではない盗賊の様な輩だが、それ故か飛段は武器も構えず警戒も持たず只呆然と彼らを見上げていた。


「なにー、何か用?」

「女が一人…こんなトコロで不用心だなぁ。こういうワル〜いあんちゃん達がいるから気をつけないと…」

「ウヘヘヘ…」


一人の男が突然飛段の腕を掴む。自分の体に触れられた事に、ここで初めて女性らしい反応を上げて抵抗した。


「あっ…何すんだよ!ヤダヤダァ!」

「あんちゃん達とイイコトしようぜ〜グヘヘヘヘ」

「いや…やっ…!助けて角都ゥーーー!!」

「うぉっ!?」


一人の男が驚きと苦悶に満ちた声を上げたかと思うと、その男は遠く向かいの樹々の群れに突き飛ばされ、姿を確認出来た頃には泡を吹いて気絶をしていた。
戸惑いを隠せない他の男達も、腹や背中に痛烈な衝撃が走り、辺りに下品な笑い声が一瞬にして消え失せてしまった。


「う〜…か、角都ゥ……」

「……」


黒髪から覗く真緑の瞳が彼女を見下ろす。女性にしては随分身長があり、その高さから落とされるげんこつはさぞかし痛い物だろう。
今度は飛段の悲痛な叫びが辺りに響いた。


「痛ったぁぁぁぁい!!死んじゃう死んじゃう頭割れちゃうゥ〜〜…!!」

「頭が割れようがお前は死なないだろう」

「うっう…ひどいよ角都ゥ、オレが下種い男キライなの知ってるくせに…何で殴るの〜?」

「だから助けてやっただろう。お前を殴った理由はその前だ、…誰がバカクズだ」

「…テへ、聞いてた?」

「今度下手な口を叩けば助けてやらんからな」

「そ、そんな!オレ気持ち悪い男に儀式なんて絶対出来ないのに…意地悪言うなよ角都ゥ〜」

「…全く、下手な口を叩かなければいいんだと学習しろ」

「何だかんだ言ってオレが大切なんだろ?照れんなよ角都ちゃん♪」

「…ム!?」

「あ、ゴメン、今のナシで」





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