目指す物は、世界征服。
忍界の強者で構成されたS級犯罪組織“暁”…。
現在まで隠密に暗き地を這う様な行動をしていたが、最近は目標達成への段階である尾獣集めへと移り、その顔が表沙汰になりつつあった。

黒地に赤き雲を模した服装…、そんな格好の者に出会したら、充分に気をつけた方が良い。




「なあ、そこのお兄さん」

「え…?」

「尾獣…若しくは人柱力って呼ばれてるヤツを知らない、うん?」

「え、ええと…そのぉ…」


突然一人の青年の目の前に現れたのは、肩から胸元を大胆に開けたセクシーな風貌の、だがまだ幼さの抜け切らない少女。長い金の髪を靡かせ、少女にしては随分豊かな胸を持ち、それはそれは男の本能を擽る姿だった。
現に青年は、彼女の胸の谷間をチラチラと見て、余り話を聞いてはいない様子。


「何か知らないかー?」

「えぇっ…ちょっ…!」


いきなり青年に抱きついた形に近い行動を取る彼女。豊満で若々しい胸をポフンと当て、問い質しているというより最早誘惑している様にしか見えない。
戸惑う青年とニヤリと口元に嫌な笑みを浮かべるその空気を切る様に、そこへドスの利いた声が二人に割入った。


「…おいデイダラ、真面目に訊きやがれ」

「うるっさいなぁー、今良いトコなんだから邪魔すんな、うん」


少女の隣にいた、かなり厳ついフォルムをした男らしき人物が、その外見に相応しい声でデイダラと呼ばれた少女に叱咤する。
デイダラに靡いていた青年だったが、そのいかにもヤバそうな男に失いかけた理性を思い出させてくれた。それでも更に迫られ、ぷくりと魅惑的な唇を近付けられ、理性と本能の間でグルグルと彷徨わされる彼。


「…それじゃあいつまでも経っても埒があかねぇな」

「…あ!だめ、出てくんなっ!」


驚きの為に肩を一つビクリとさせる青年。目の前の男の体が突然不自然な形で、まるで箱の蓋を開ける様に二つに分かれたのだ。その時点でそれは、普通の人間ではなく、人形の類と言う事が明らかとなった。
そこから出てきたのは、厳ついフォルムと声を忘れさせる…小柄で可憐な少女であった。


「…驚いたか?ごっついおっさんから出てきたのは、ソイツよりももっと可愛い女でした、と」

「う、わあ…」

「わっ、待って、お兄さんオイラの方向いてよ〜!」


デイダラよりはスレンダーな物の、バランスの取れたその体と、何よりその美しい顔つきに青年は惚けて見とれるばかり。
獲物を盗られたと悔しい表情をするデイダラは、醜い女の争いを勃発させる一言を己の口から吐き出した。


「っ騙されんな!アイツは、サソリの旦那は『35歳』なんだぞ!うん!」

「…え゙っ…」

「なっ…テメェデイダラ!年齢を口に出すんじゃねぇっていつも言ってんだろ!そこのテメェもリアルにひくな…!」

「オイラは正真正銘の『19歳』、勿論このおっぱいも自前だよー?若いピチピチのオイラの方がずっといいよね、お兄さん?」

「確かにオレは35歳…(小声)だが、身体年齢は『15歳』のまま変わってないんだ。寧ろ19歳の方がババアだろ」

「はあ!?調子乗ってんなよさん・じゅう・ごさいぃ〜〜!」

「んだよ、やんのかテメェ…」


何だかヘンな事に巻き込まれたと、二人が喧嘩をする中、青年はそそくさと二人の前から忍び足で姿を消してしまったとさ。


「ああーいなくなってる!だ、旦那の所為なんだかんな、うん!」

「うっせぇよ、大体一般人狙う方がどうかしてんだ。あんな大した事ないヤツを狙うのが可笑しい」

「うー…、リベンジだ!また次のオトコ捜すぞ!」

「次もオレが勝つけどな」

「次もってどういう事?さっきのは明らかオイラのが勝ってただろ?」

「年齢言う前のアイツの顔見ただろう、確実にオレの方がタイプって顔だった」

「むぅぅぅぅ!」



S級犯罪組織…とは言ったが、彼女達は互いの美貌を競い合う為に、余り世界征服には興味がない様で。
リーダー涙目、と言った所です。





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