熱の入った指差しをしてから、急に我に返る。
お、オイラ…何人形相手にンな興奮してんだか…。上がった熱に相乗して顔が燃えてるみてーだ。

すると突然、オイラの言葉に応えたみたいに傀儡の首が重力に従って床にボトンッ、と落ちた。
び、びびったぁ…全身が逆立ったぜ…。こんな気味悪いモンが独りでに動くなんて冗談じゃねーぞ…うん。
旦那にも怒られそうだし、いそいそと頭部を元の位置に戻す。
すると、傀儡の体の中で何か光る物が反射したのを視界に入れた。うん…なんだ…?


「…あ、…これって……」


中腰姿勢となって、傀儡の衣服代わりの黒い蓑の隙間に手を入れて掴み取り出した、その光を弾く物体。
見てすぐに分かる、これは額当てだ。砂隠れのマークが中心に刻まれた…忍の証。この傀儡のだろうか?
いいや…この抜け忍を表す横一文字の傷、これはきっとサソリの旦那の額当て。
今まで旦那の額当てを目にした事がなかったけど、後生大事にこの傀儡の懐に仕舞ってあったのか…。
布部がボロボロで、オイラが引っ張り取り出しただけで簡単に取れちまった額当て。時代の流れと重みを嫌でも感じた。喉の詰まる思いがする。



「…デイダラ、そこで何やってやがる?」

「っ!あっ、サソリの旦那!?」


いつの間にやら、オイラが呆けている内に買い物から帰ってきた旦那。手に小さな紙袋を持ち、不審げにオイラを見つめる旦那の視線が、今のオイラには酷く突き刺さる物があった。


「…あ!テメェその手に持ってるヤツ!」

「あ、げっ!ち、違うんだ旦那!こ、これはだなぁ…」


オイラが傀儡の中からブチ取っちまった額当てを見て、顔色を変える旦那。そりゃそうだろうな…。必死に言い訳を考えながら額当てをブンブン振って誤解を解こうとする自分が情けねー…。
だけど旦那は、意外にもすぐにその怒る顔を引っ込め、少し暗さを纏う表情に変えてオイラへゆっくりと近付いてきた。ベッドの上に紙袋をポンと置く。


「三代目の事、気にしてたのか?」

「……。そりゃあ気になるって、コイツが壊れた時の旦那の顔…オイラ今まで見た事なかったし」

「…!………」


オレそんな顔してたのかと、気まずい雰囲気を醸す旦那。
気まずさの流れるこの空間で、どこを見ているのかも知れない目の前の壊れた傀儡は、やっぱり不気味でしょうがない。





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