森を抜けた名の知れない小さな里、今日はここに身を置く事となった。
旦那はこんな小里に当てはないが、傀儡を直す部品がないかを見て回ると、オイラを宿の部屋へ残して出て行っちまった。

旦那を見送って、やる事のないオイラはベッドでゴロンゴロンしたり。床に胡座をかいて意味なくうんうん言ってみたり。
…オイラも意外に待つのが下手だな。

ふと、ベッドの脇の旦那の荷物に目が止まる。旦那自身が自分の荷物に興味持たれるの嫌がるからな、普段はあんま気にしない方なんだけど、アレが引っかかってるから…。
オイラは床から立ち上がり、裸足でペタペタと足音を立てながらベッド周りを迂回する。


「……!」


さっきまで様子を見てたのか、あの傀儡がベッド端に凭れて座った格好でそこにあった。頭から白い布切れが被せられてるけど、きっとあの傀儡に間違いない。

少しだけ躊躇った、だけど思い切ってその布切れをバサリと取り去ってみた。
取れちまった頭は只単に首部分にちょんと置いただけで、それがやけに不気味に見える。…いや、それ以前だな。やっぱりオイラと旦那の芸術性は真逆だ。改めてそう確信する。
でも、コイツは何となく芸術とか…そういう類には見えない。オイラが頑なに他人に芸術を見ないのも原因があると思うが。
そうだ、コイツは元人間なんだ。旦那と遠い昔…何かしらに関わっていた、男。


「………、けっこう、格好いいな。………ハッ!」


な、何言ってんだオイラはっ!とても自分の口から出た言葉とは思えねー…!
だけど、まじまじとよく見てみるとそうなんだよな。端正な顔立ちで、背格好からして大人だし。何つーか…旦那が好きになりそうなヤツだ。何となくだがな。
うーん…そう思ったらやたら腹が立ってきた…。



「オイ!」


「オイラは、確かにテメーより年下だし、旦那とも年齢差がある。実際の所、オイラは旦那と不釣り合いなのかもしれねー」


「テメーが生きてたら、テメーの方が旦那を幸せに出来るのかもしれねー」


「けど、」


「オイラはここに生きていて、テメーは死んでいる。今は…オイラがサソリの旦那を幸せに出来る立場なんだ!昔旦那と何かあったかは知らねー、知りたくもねー。
オイラにとって大事なのは、今この時の瞬間だからだ!」



「オイラは、テメーにゃ負けねーからな!!」





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