緑溢れる覆い尽くされそうな程の樹々が生い茂るその空間。全ての大樹を切り倒してしまえばだだっ広い景色になりそうなそこで、嫌にその音は響き渡った。


バキリ、と。



「あ…」

「……うん?」


丁度目の前の対峙していた敵にとどめを刺したオイラは、その不穏な音と旦那の漏らした普段聞かない様な短い声に思わず振り向く。
敵が地面に突っ伏すのとほぼ同じタイミングでそこに落ちたのは、旦那のお気に入りとか言う三代目風影の…頭部。更に後に続いて右腕がボディからもぎ取れていった。


「う、わっ!何、どうしたんだよ?」

「……」


戦闘終わりの静けさを帯びるそこで、サソリの旦那はチャクラ糸を解除してゆっくりと三代目の傀儡の傍へと歩む。
落ちた生気のない人形の首を手に取り、じっと見つめて動かない旦那の姿が、ちょっと近寄り難くて思わず言葉に詰まる。
…要するに、傀儡がブッ壊れちまったって事で、いいんだよ…な?


「な、なあ…サソリの旦那?」

「どうもオレは、コイツに頼りすぎてて駄目だな」

「……!」


何だろ…今の。今までに見た事のない様な表情だった。笑いの中に少し悲しさを含んだみたいなその顔に、眉間にグッと力が籠もる。
落ちた右腕も拾い、巻物を取り出してその中へと仕舞う旦那。整備をすればちゃんと元に戻ると、オイラの戸惑いをカバーする様に簡単な言葉を放った。



前々から考えていたんだ。
サソリの旦那は元砂隠れの忍。傀儡は砂隠れの長三代目風影。この二人には何らかの関係が少なからずあるんだと。
オイラの立場からすれば、二人の間には入り込む隙もないのかもしれない。下手をするとオイラの生まれる前から関わりを持っていた二人…。

それでもオイラは、多分…この傀儡と一緒で旦那の事を誰よりも想っているから、その関係に気後れしたりなんてしねー。
オイラだって、旦那の事を愛しているから。





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