「結局オレが作るはめに…」
「おお、美味しそうだね。戴きます」
「ん」
料理を一口、口に運ぶ風影。それを肘をつきながら見つめるオレ。
「ん!美味いな!」
「しょうがねぇから、今一番得意な料理を作ってやったんだ」
「それは嬉しいね」
「…ふん」
自分も食事にありつこうとした時。
「サソリ、」
「?」
「あーーん」
「は…、やるわけねぇだろ馬鹿が」
「恥ずかしい?」
「ガキじみてるって事だ」
「子供じゃん、サソリは」
「てめぇもな」
「じゃあ問題ないね。あーん」
…いつの間にか何気に上手く言いくるめられてるのが、腹立つ。
仕方ないから、仕方がないから風影のガキじみた行動に付き合ってやるだけだ。
向かい側のヤツの方に前のめりになり、伸ばされた箸に口を近付ける。口を開けて料理を食おうとした…が。
その箸は寸前で身を引き、料理は風影の口に。
「……」
「物欲しそうに口開けて。可愛いなサソリ」
コ イ ツ … !!
「っざけんな!もう手料理食わせてやんねぇ!これも没収だオレが全部食うッ!」
「あっ、悪かったってサソリ!ああ…オレの飯がぁ…」
くっそ…頭くるぜ。
宣言通り、二人分の料理を全て一人で食ってやった。
「流石に胃にくる…」
「ほら、無理するから。…というかオレは一口しか食べてない…」
「自業自得だ」
気が抜けるくらいに穏やかな時間が流れてる。静かな雰囲気と、満腹感と、目の前の奴…。
これは、安心?
胸がほっと温かい気がするこの感覚。満たされすぎて、今にも消え失せてしまいそうな…この…。
「なあサソリ」
「…っ?」
「昼寝でもしない?」
「……なんで」
「眠たいから。人って何で安心すると眠たくなるんだろうな」
考えてる事は奴も同じ…か。
気に入らなくもあり、少し嬉しい気もする。
「寝るっつったってどこで…、っうわ!?」
「やっぱサソリは軽いな」
「な、何だよ下ろせよ」
風影はオレを抱き上げて、リビングのソファーに下ろし自分もその隣へと座った。
「…ここでかよ」
「寝転がって寝るとサソリ逃げちゃいそうだからな。オレにもたれて眠りなよ」
ぐっと肩を寄せられてオレと風影の距離が縮まる。ふわりと風影の匂いが香った。オレにまた深い安心をもたらしてくれる、風影の全て。
自然と自分の頭を風影の胸に預けた。次第に瞼が段々と下りていく。
「…、風影」
「ん?」
「妙な真似したら…許さねぇからな…」
「…了解しました」
そしてオレは、温もりに包まれながら眠りへと落ちた。
「釘を刺されてしまったな。…オレも素直に眠りますか」