今日は任務がない休みの日。オレは自分で育てている様々な植物を管理する部屋に入り浸っていた。
遠出の任務の際に何気なく摘んできた草花の数々。それを育ててあらゆる毒物の研究と実践を繰り返してきた。傀儡で仕込み道具を扱うオレにとって、傀儡製造の次に興味のある対象。
毒をもつ植物の生態は飽きさせてくれねぇ物ばかりだし、まあ嫌いじゃない。
「今日も研究は進んでいるかな?サソリ」
「…!お前、気配消して入ってくんな」
「完全には消していないよ。サソリが集中しすぎていただけだ」
「…ったく」
ここは本来、誰にも近付けさせない作りになっているが、コイツだけは特別だ。
机にかじりつくオレから離れ、周辺の植物達を見て回る風影。
「…今、何時だ」
「もうお昼間近。オレの朝の会議も終わったよ」
「はあ…時間は経つのが早いな」
「サソリ、一緒にお昼食うか?」
「…何食うんだよ」
「何って、勿論サソリの手作り料理」
「失敗決定の物でよければいくらでも」
「う…そんなに手料理食べて欲しくないのか?まだ下手なら、オレが味見役になってやろうか」
「いい…ってオイ、よそ見しながらそれに触んな…!」
「え?」
バカ、コイツ…。
一際大きく咲く鮮やかな花びらに毒をもつそれに触れやがった。
「…えーと、これヤバい感じ?」
「世話焼かせやがって、こっちきて水で洗い流せ」
風影の腕を引っ張って流し場へと連れて行く。変態な上に阿呆で天然でどこか抜けてるから、コイツって世話がかかるんだよな…。
「洗えば大丈夫?」
「まあ…体内に入りさえしなければな。万が一入ったとしても、この毒対策の薬はあるし」
「オレの事、心配してくれてるのか」
「当たり前だ!…っ中にはヤバイ毒をもつ植物もあるから、当然だ。やっぱこの場所を教えたのは間違いだったか…」
「オレは、サソリの興味のある事、熱中している物は全て知りたい。だからそんな事言わないでくれ。今度から気を付けるから」
「……、…ああ」
「お昼、一緒に食うか?」
オレが小さく頷くと、風影は満足そうに笑いオレを抱き締めた。
水で濡れた手はそんなに気にならなかった。