某商人アニメのOPのファンタジックでノスタルジーな曲調を聴いていると、世界のどこかを旅する芸コンがふわふわと浮かんできました。


忍界の節々で組織内も含めて死んでしまったと認識されていた、暁のメンバーのサソリとデイダラ。しかし死んだと見せかけて、どこか誰も知らない場所でひっそりと生きていた。二人は暁に属していた頃と変わらずにいつも共にいて、フードを深く被らなければいけないという煩わしさはあったものの、二人で世界のありとあらゆる物を見て感じ、芸術家として刺激を受け、笑う時は笑い喧嘩する時は喧嘩をし、他愛のない毎日をいくつも過ごしていく。
春夏秋冬。桜の花と淡い緑や黄に囲まれ、虫や動物達が戯れている。空も山々もくっきりと色を主張するビビットカラーに、降り注ぐ太陽の熱は痛いくらいでそれでもどこか心地よくて。紅葉の赤の中で見る滝はこれまた絶景、落ち葉のふかふか絨毯に寝っ転がるなんて一昔前の様なベタな展開。真白の穢れのない風景はどこか寂しげ、それでも必要で大切な厳しい美しさを教えてくれる。その中に流れる文化、人々の歩み、楽しそうな事辛そうな事、この世界の事実、目を逸らしてはいけないあるがままの成り立ち。全てを共に見てきた、時間の許す限り。

デイダラは普通の人間だから、やっぱり普通に年を取る。二十歳を超えてから急にぐんと背が伸びて、体付きも成人男性そのもの。あの頃のこれからの成長の懸念が嘘みたいに。
サソリは傀儡の体だから、背の伸び方なんてとっくに忘れている。ずっと背の高くなった相方に、見上げて眉間を寄せるのも無理はない。背中もおっきくて繋いだ手もおっきくて、なんだか自分が小さくなってしまったんじゃないかと、何とも言えない笑みとため息を零したくなった。
忍はやめても芸術家は一生でありたい。最近自分の芸術を他人に向けて完成させたいと言わなくなってきた。それでも爆発に芸術性を求める彼の本質は変わらず、右も左も上も下も誰もいない二人だけの空間で芸術を見せ合ったりしている。もう二人の周りにいた人間は背景と化して、気にも止めなかった。二人だけの世界で、二人だけで心を見せ合った。


縛るもののないこの世界でずっと一緒にいたい。そればかりを考えていた。もうコイツだけしかいなくなった。それは幸せな事でもあり、怖い事でもある。年月が過ぎて年を重ねても、自分は全く変わらない。初めてコイツと出会ったその日から何もかも変わっていない。それでもコイツはどんどん大きくなって、どんどん頼りになって、繋ぐ手に硬さが目立ってきて、ガキっぽかったその面に皺が刻まれていって。それでも自分の姿は変わらなくて。
命の尽きるその時まで、一緒にいてやれるだろうか。魂の無くなるその時に涙のひとつも流してやれやしないけれど、自分が求めた芸術とお前と過ごした日々に後悔したくないから。二人だけで生きたこの世界が、オレの世界だったから。

そのお話はある一つの終末点、もう一方はまた別のお話がある。

成長する体、世界で一番大切な人を守る為に作られていく体。姿の変わらないあの人を守る為の過程。力を得られる事に満足していた、それなのにあの人がだんだんと小さくなっていく様に見えるのはどうしてだろう。目線が上がった所為?体が逞しくなった所為?それも勿論間違ってはいない、だけど姿が変わらないはずのあの人は、確かに小さくなっていた。
元々人間なのか人形なのかどちらともつけない姿。何らおかしな事が起きても疑問なんて見当違いの域だ。一日一回必ず行なわれるメンテナンス、それでもそれに限界があるのは、人間にも言える事。思いもよらない事態は神様にだって分からない。
眠る事さえも忘れた体なのに、どんなに声を掛けても返事が返って来ない。時々本当に人形になったみたいに抜け殻状態になったり。それはどう見ても、生き物としての最後が来ている様にしか見えなかった。
長い時の中、ずっとずっと一緒だった。世界の端の端まで見て沢山笑って怒って楽しくて、一緒にいて好きになって離れるなんて考えもしなくて。忍として生き暁にいた頃を思い出話にしてしまうまで、自分の人生の大半をこの人と過ごしたんだ。
正直ほっとした所もあった。人間なのか人形なのか分からずに悩んだこの人にも、確かに生き物としての命があった事に。終わりがあるのはやっぱり安心する。
左胸に埋め込まれた小さな小さな命は、最後の時まで宿っていた。まさかお前より先にいくなんて考えもしなかったといつもの様に笑う小さな人を、抱きしめて抱きしめて、愛していると強く想いながら抱きしめて。
愛を常に求め続けていたこの人を少しでも幸せに出来たのなら嬉しい。またいつか必ず、必ずまた会いに行くから。先におやすみなさい。



歌一つで、彼らが共に生きそしてその終わりをどう感じどう看取るのかを考えさせられた事に、私の妄想力もまだまだ衰えを知らないなと自負。
単に世界の沢山の文化や環境を旅して、一喜一憂するデイとそれを大人の目線で見守る旦那という一枚絵を妄想するだけでよかったんですけど。ここら辺の妄想は正に妄想を生み出したアニメの世界観そのものですね。そのアニメは商売の損得ありきのファンタジーな物語なのですが、世界観が言った通りほっとする様な懐かしさがあって非常に私好みなのです。これだけで分かった人は是非ともお声掛けを。
暁の縛りがあったり犯罪者故に心に隙を与えられない生活を送っていたであろう二人、芸術家としてもっと色々な経験をし色々な世界を知り、充実なアート人生を生きて欲しかったという願いを込めて、長ったらしく妄想してしまいました。
文章にするとダメだな…自分の脳内で作り上げた動画とカラーリングとストーリーは一人で涙ぐみそうな程に感極まっていたのに。もっと脳内にある物そのものをドーンと取り出してバーンと公開したいです。切実。


15/08/28 01:37 [cate.妄想]





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